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第71話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あっ……日向くん……こっち、こっち!!」
「ご、ごめん……ちょっと遅くなっちゃって――まだ、薫さんが出るっていう御子舞(おしまい)って始まってない?」
石畳の通路の両脇を屋台が囲み、辺りに雅楽の鳴り響く神社に、やっとの事でたどり着いた僕と日和叔父さんは夢月達との待ち合わせ場所である黒鳥居を探すと慌てて駆け寄って行く。
カサネは既に屋台で色々な物を買い込んだのか、わたあめを頬ばりながら此方へと手を振ってきた。よくよく見てみれば、わたあめだけでなく――もう片方の手には、ソースのこうばしい香りが漂う焼きそばを持っている。よほど、お腹が空いているらしい。
僕と夢月と同じように女物の桃色の浴衣を着ているシャオリンは苺のシロップがドッサリかかっているかき氷をシャクシャクと音をたてながら美味しそうに食べている。その度に、冷たさに耐えきれず両目を瞑りながら顔をしかめるシャオリンがおかしくて自然と笑みを浮かべてしまった。
夢月は夢月で―――生地が藤色で朝顔の花が描かれており濃い緑色の帯の浴衣を着ている。聞くところによると僕に勧めてきた女物の浴衣とペアで買ったそうだ。夢月は金魚すくいをしたのか――右手で尾ひれがヒラヒラと美しい赤い金魚の入った袋を持ち、左手には血のように真っ赤で艶々とした林檎飴を持って満面の笑みを浮かべながら僕の方へと手を振ってくるのだった。
シャン……
シャン……シャリンッ……
神社の境内の脇にある広場のような場所から――美しい鈴の音が聞こえてきて、やがて屋台で鳴っていたのとは別の雅楽が鳴り響く。そして、雪のように真っ白な衣装を身に纏い――女の人みたいに唇に血のように赤い紅を塗った薫さんが舞台袖から出てきたのは僕らがちょうど全員集まった時だった。
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