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第73話
―――ドドォンッ……ドドンッ……
――シャリンッ……シャララランッ……
僕が木の下で微動だにせずに突っ立ったままの不気味ともいえる異様な光の姿をジーッと見つめていると――ふいに鈴の音に混じりながら聞こえた花火の大きな音が聞こえ、ハッと我に返る。
そして、その花火の明るさに照らされ――木の下で置物のように突っ立っている光の背後が僅かな時間だがハッキリと僕の目に入ってくる。
―――置物のように虚ろな瞳で突っ立っている光の背後には黒い小さな影が―――しがみついているのだ。しかも、今もなお何も気付かず涼しい顔をしながら優雅に舞いを続けている薫さんの周りにいる得たいの知れないモノとよく似た形の――人間の子供のような形をしている黒いナニカが光におんぶされているかのように背後からしがみつき――そして、黒い長い手を光の首筋へと伸ばそうとしている。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「―――なたくん、日向くん……もう、薫あにや様の舞いはとっくに終わったよ!?これから、屋台に、いこうよって……何か、顔色が悪いけど――大丈夫?」
夢月の慌てた声で―――ハッと我にかえって辺りの様子を見渡してしまう。其処には、舞いを踊っていた薫さんどころか――先程の二人の村人すらおらず――人もまばらにしかいなくなっていた。
勿論、木の下で虚ろな顔をしながらボーッと置物のように突っ立っていた光などいなく――得たいの知れない黒いナニカ達も存在していた気配すらなかった。
「ねえ、行こうよ……日向くん、皆――向こうで待ってるよ」
「あっ……ま、待って……待ってよーー夢月ってば!!」
確かに、屋台の立っている方でカサネと日和叔父さん――それに、シャオリンが僕に向かって笑顔でおいで、おいでをしているので慌てて僕は夢月と共に彼らが待っている屋台の方へと駆け出していくのだった。
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