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第75話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ―――生臭い……生臭い……生臭い 神社から戻り、屋敷へと一歩足を踏み入れた途端に僕の鼻をついてきたのは、異様な程の生臭さだった。思わず、鼻を詰まんでしまいそうな程の生臭さであるにも関わらず他の皆達は何の反応も示していない。 (―――僕の……気のせいなのかな……それにしても、何か……異様な程に――眠い……) 慣れない土忌野村に来たせいなのか―――。 昼間、海で何か得たいの知れない黒いモノに引き摺り込まれそうになったからなのか―――。 光という鬼のように恐ろしい男に襲われた心労からなのか―――。 神社でのお祭りに参加したせいなのか―――。 色々な不安や恐怖が、僕の頭の中に浮かんでは消え、また浮かびあがる。 しかし、とうとう強烈な眠気には耐えられず―――そのまま意識を手放して深い眠りの世界へと誘われてしまうのだ。 完全に眠りの世界に誘われる直前でさえも、屋敷の何処かから漂う強烈な生臭さは――消え去る事はなかった。

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