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第82話

◇ ◇ ◇ ◇ ―――あの後、御身送りの儀式を全て終えて屋敷へと戻ってきた僕ら。滞りなく儀式が終わり、ホッと胸を撫で下ろしながら夢月が玄関を開ける。 「ただいま、小鈴くん――小鈴くん……あれっ……おかしいな、彼――迎えに来ないよ?」 しかし、小鈴こと――シャオリンの姿が見当たらない。 御身送りに行く前までは確かに屋敷にいて、しかも僕らが帰ってきたら玄関でお出迎えしますと可憐な笑みを浮かべながら言っていたのに―――。 その後、何度屋敷内を探してみてもシャオリンの姿は見当たらず――薫さんの許可を得て人手を借り屋敷周辺も探してみるものの――やはり見つからない。 この辺りの周辺は山々に囲まれていて、獣が出ると洒落にならないから、と一度捜査を打ちきり、一抹の不安を感じつつも僕らは床につくのだった。 (シャオリン……どこ、どこに……いるの……お願い……シャ……オ……リ……ン……) まるで本当の弟のように人懐っこい彼の笑みが固く閉じた僕の瞼の裏に浮かんでくる。自然と涙が溢れるが――眠気には抗えず、シャオリンの行方が気になりつつも深い眠りに誘われていくのだった。

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