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第87話
「ひひっ……新しい旦那さんから――よそ者のキサマを食してよいと赦されたんや……存分に――食してやるから覚悟しいやな――ああ、旨そうな肢体やなあ……さて、まずはその邪魔な布をなくすとするかえ……」
「……やっ……離してっ……離してってば……あっ……!?」
びゅっ……
びちゃ……ぬちゃっ……
僕が幾らもがこうとも――無数の蜘蛛の糸で腕や足を絡めとって身動きを奪っている頑丈な糸は切れる事はない。
それどころか、もがけばもがく程に――その頑丈な糸はがんじ絡めになり、まるで操り人形のようになってしまう僕。
更に、最悪な事に――先程から僕という獲物を捕らえてご機嫌な大蜘蛛は急にすぼめた口元から何か液体のような粘り気まじりのものを僕の全身に向かって吐き出す。それは、一見すると粘り気はあるものの無色透明な液体だったのだが――徐々に僕の洋服の布だけを溶かしていっていることに気付いてしまう。
「やっ……やだっ……僕の……服が……溶けてくよぅ……んっ……ああんっ……」
――最悪なのは謎の粘液により洋服が溶けて、あられもない裸を大蜘蛛の前に晒してしまっていることだけではない。
服が完全に溶かされてしまって少しした後、どくんっ……と心臓が飛びはねる様に鼓動したかと思うと――言葉に出来ない程の強烈な快感と火照りが裸となった僕の全身に襲いかかってくる。
そして、そんな僕の異変を待ってましたといわんばかりに大蜘蛛の体の一部が形を徐々に変えていく。先程までは、普通の蜘蛛と同じような足だったにも関わらず――僕が得たいの知れぬ強烈な快感と火照りに襲われた途端にその蜘蛛の足は――うねうねとした柔らかい状態へと変化していくのだった。
――その足の見た目は蛇と瓜二つなのだ。
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