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第88話
「ほーれ、ほれ……よそ者や――わしの足が貴様の象牙のような肢体に……絡みつくぞえ……ああ、ああ……何と気持ちのよき事や……あのろくでなしの次男坊……光様の肌よりも―ー旨いんや」
「ひっ……ううっ……やめっ……やめて……っ……」
「ふーむ、しかし……光様の肌より具合はよいもののーー足りぬ、何かが……足りぬ……そうじゃーー恐怖による悲鳴が……足りないんやし……ならばーー」
その何本もある蛇のように滑り気のある蛇の見た目のような足で獲物である僕の体を拘束しつつ、大蜘蛛は怯えきっている僕の眼前にきてその恐ろしい鬼のような顔を近付けてくる。
ーーそして、
ぐちょっ……ぬちゃ、ぬちょっ……
それこそ、蛇のように太く細長い舌で僕の体を好き勝手に舐め回していく。特に、僕の胸元で桃色に尖った二つの突起を執拗に舐めたりーー吸い付いたり、なぶったりしてくるのだ。
「ひ、ひゃあっ……やだぁ……やだっ……やめてっ……気持ち悪い……気持ち悪いよ……助け……て……日和……おじさん……っ……あっ……んっ……ああんっ……」
「その声や……その声はーー普段は生意気なあの光様でさえーー出しとったんや……顔も気持ちよさげに呆けた顔をしおって……そろそろ、うまい具合にこの下で執念深く待っている以津真天の餌となるやろ……ほれ、下を見てみいやーー」
ーーぐいっ……
と、僕は大樹の真下の光景なんて見たくなかったのにーーもはや大蜘蛛の操り人形と化してしまった僕はその蛇のような見た目の足で無理やり顎を取られるとそんな気持ちなどお構い無しに強引に下を向かされるのだった。
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