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第90話

黒い喪服を着て、必死で此方へ救いを求めるか――或いは僕を帯の大海へ引きずり込むためかは分からないが、ぷか……ぷかと浮かんでいる髑髏の女性達は――まるで水槽内をひら、ひらと尾びれを動かしながら泳ぐ出目金のようにも見える。 と、そんな――哀れな女性達の成れの果てを怯えながら見つめている僕の元に【爺や】が現れ――その涎まみれの口をがぱっと開けると、通常の蛇と同じくらいの大きさと太さを持つ舌を無理矢理に僕の口へと侵入させてきて好き勝手に口内を犯し始める。 僕の舌に絡まってくる【爺や】の蛇のような舌が――途徹もなく熱くて、ぐちゅっ……ぐちゅと舐め回される度に頭の中がボーッとしていく。 まるで、【爺や】によって僕の体全体が溶かされていくようなくらいにビリビリと痺れる快感に支配された時――、 「し、しゃお……り……ん……?」 帯の大海の中で――ぷか、ぷか……と浮かんでいるのが【以津真天】と叫びつつ骨と化した手を必死で此方へと伸ばしている喪服姿の髑髏の女性達だけでなく、別の存在らもいるという事に、ようやく気付いた。 帯の大海に漂いながら浮かんでいるのは――喪服を着て出目金のような髑髏の女性達だけではない。 ――小鈴だ。 真っ赤な着物を着て金魚のような小鈴までも浮かんでいるのだ。 それだけでなく、力が抜けつつあり半開きとなった目で――ざっくり見た所、おそらくだけど5人程の男の子(女の子もいるかもしれない)が気を失ってぐったりしたまま帯の大海を漂っている。 (し、しゃおりん……それに……あれって、もしかして…僕が光さんに襲われる前に祭り会場で話していた二人組の男の人が話していた行方不明の――少年……たち……は、はやく……はやく助けなきゃ……でも……ちからが……でな……い……) 【爺や】の攻撃によって骨抜きにされ、このままの状態であれば、おそらくは快楽漬けにされてから――先程、僕が見た【旦那様】とやらのように骨だけになりムシャムシャと骨の髄まで飴玉のようにしゃぶられてしまう。 (ああ……さいごに……ひよりおじさんや……とうさん……むつき……に……あいた……い……) ――びゅっ……!! 無意識の内に目に涙を浮かべながら――抵抗する事さえ諦めてガクッと力なく項垂れてしまう僕の気持ちを悟ったと言わんばかりに――真下に広がる帯の大海の方から、僕をなぶり続けている【爺や】へと向かってナニかが勢いよく飛んでくるのだった。

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