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第92話
しかし、いくら小鈴が自在に伸びる己の髪の毛を使って【爺や】を攻撃した所で依然として――絶対絶命な事に変わりはない。
僕は【爺や】の口から垂れている溶解液(というより唾液)のせいで体の自由が奪われ、麻痺状態となり大樹の枝に釣り上げられている上に――小鈴は一度は髪の毛の束を伸ばして【爺や】を絡めて締め付け攻撃をしようとしたものの、それを敏感に察知した【爺や】から呆気なく阻まれてしまっただけでなく、再び帯の大海に漂う【喪服姿の髑髏の女性達】によって僕と同じように体の自由が奪われつつあるのが分かる。
(ひ、ひより――ひより……おじさんっ……たす……け……て……)
僕の頭の中が、今まで日和叔父さんと過ごしてきた日々の記憶で支配された時――、
――ガガッ……
――ガガガッ……
僕が釣り上げられてしまっている大樹の――遥か上の方から何かを引きずり下ろすような変な音が聞こえてくる事に気付いた僕は怪訝そうな表情を浮かべつつも目線を上へ、上へと移す。
それにつられたのか、僕に襲いかかる怪異なるモノの【爺や】でさえも――どことなく焦ったように目元や口元を歪ませつつ――慌てて上を見上げるのだった。
――ピカッ……!!
次の瞬間、上を見上げた僕と【爺や】が思わず目を閉じてしまう程に、まるで雷のような強烈な眩しい光が【爺やの呪場】全体の辺り一面を覆い尽くしてきたのだった。
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