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第98話

(どこだっけ……あれ――誰に……貰ったんだっけ……ダメだ――思い出そうとすればする程に……胸が苦しくなる……っ……) 「どうしたの……日向くん、そんなところでうずくまったりして……ほら、早く……――すくいをしに行こうよ!!」 「――すくいは……大人気だからな。夢月の言う通り――早くしないと……ほら、日向くん……行こう……そうしないと……ってしまう……」 「えっ…………!?」 空中に放たれる花火の大きな音と――すれ違う人々の楽しげで幸せそうな、はしゃぎ声にかき消されて光さんの声に僅かばかりの疑問を抱いたものの――二人から半ば強引に手を引かれて【――すくい】の屋台へと駆けて行ったせいで――その屋台に着く頃には僕は射的の景品として置かれていた『誰かから貰ったウサギのぬいぐるみ』の事は頭からスッポリと頭の中から抜け落ちてしまっていたのだった。 ※ ※ ※ 「ほら、ほら……見てよ――やっぱり早めに来て良かった。ここにいる人たち、みんな……――すくいをやりたいから集まったんだよ……ねえ……日向くんもやってみない?きっと、いい気分に――なれると思うよ?」 「えっ……で、でも――これ……想い手すくいって……何なの?そんなの……聞いたこともないよ――夢月……」 その屋台に半ば強引に連れて来られて、目の前に広がる光景を目の当たりにした時――あまりの異様さに僕は思わず息を飲んでしまった。 【想い手すくい】とでかでかと看板に書かれている屋台の周りには――確かに夢月や光さんが言うように沢山の人々が集まっている。 しかし、何か――様子がおかしい。 子供や大人――それに老人など……様々な世代の人々が集まっているのは確かなのだけれど、皆が皆――青白い顔でジッと生気のない死んだ魚のような気味の悪い目を下にむけて青いビニールプールに釘付けとなって――あるモノを見つめているのだった。

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