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第100話
「わ~……凄い、凄いよ――日向くん……っ……これで――日向くんも……わ……せに……なれるね……」
「えっ…………!?」
僕が【想い手救い】とやらの青いビニールプールの水面に漂っていた桃色に光る紅葉を網で救いあげた途端に――隣にいてニコニコと笑っている夢月や光さんの顔がぐにゃり、と歪み……更に笑顔の度合いが一瞬にして増した。
その二人の異様な姿を目の当たりにして得たいの知れない不安と恐怖を抱いてしまった僕だったが――、
――ぎゅうっ……
その笑顔の度合いが一瞬にして増した夢月が、ふっ……と目線を逸らして何処か――いや、僕の背後の辺りに目線を移したすぐ後で誰かが余りの恐怖と不安のせいで小刻みに震えてじんわりと汗ばんでいる僕の手を優しく握ってきたため慌てて僕は背後へと振り向く。
『……日向……あなたは――とても、器用なのね。流石は日陰さんと私の子だわ――いいえ、それだけじゃなくて……日向、ずっと――あなたに会いたかったの……だって、あなたは――私のかけがえのない大切な子だもの……っ……』
「か……母さん……さん……本当に……母さんなのっ……!?」
――背後から、僕の手を優しく握ってくれた存在。
――それは、【この世】には既ににいなくて肉体というものが存在しない筈の愛しくて――ずっと会いたかった【母さん】だったのだ。
忌まわしい――あの日、事故にあった時に着ていた赤いカーディガンを羽織り、お気に入りのお花のゴムで腰まである長い髪を後ろで一つに纏めている母さん。
手にはお祭りらしからぬ買い物バックを手に提げているのも、あの日――僕の我が儘を聞いて買い物に出かけたせいで事故にあったという――死に遭遇したあの日のままなのだった。
僕は泣いた――。
周りに嬉しそうな顔をしている通行人がいる事や、死人のような顔をして【想い手救い】の順番を待つ人々がいる事も――そして、先程よりも狂気じみた笑みを浮かべていて僕と此処にいない筈の母とのやり取りをジッと見つめてくる夢月や光がいる事も気にせずに僕は、わんわんと声を張り上げながら二度と触れあう事が出来ないと思っていた母と再び会える嬉しさに対して周りの事などお構い無しに、ただひたすら泣きじゃくるのだった。
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