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第101話

『日向……日向――ママは……これからずっと……日向と、あなたのお父さんである日陰さんと一緒にいたいわ――だから、ママから日向にお願いが1つあるの……』 「お願い……っ……て何なの!?僕、母さんと一緒にいられるなら――何でも聞くよ!?」 母さんの優しい手が僕の手をギュッと優しく握ってくれているせいか――無意識の内に満面の笑みを浮かべながら僕は興奮気味に穏やかな笑みを向け続けている母さんへと尋ねる。 『やっぱり……あなたはいい子ね、日向……あのね――あなたが救ってくれたコレに口づけをしてほしいの……軽くでいいのよ……そうすれば、あなたと母さんは――これからずっと一緒……』 ふと、母さんが――僕の手を優しい手つきで開いて大事に握っていた【想い手】と夢月達が呼んでいた紅葉を僕へと見せつけてきた。淡い桃色に――光る紅葉。 その桃色は、僕の家の中庭に咲いている桜の花の色のように儚いが――とても、とても―――。 「……っ…………!?」 何故だろう―――。 僕の家の中庭に咲き誇る桜の木を頭の中で思い浮かべた途端に――胸が締め付けられるような切なさと苦しさが混じったかのような感覚に陥り、思わず地面に崩れ落ちそうになってしまう。 でも、傍らにいて――母さんと同じように穏やかに微笑む夢月と光さんが咄嗟に支えてくれたから地面に倒れ込む事はなかった。 ここは――【笑顔】に満ちている。 とても、とても……【幸せ】――― と、僕が心の中で思いながら救いあげた桃色の【想い手】と呼ばれていた紅葉に唇を近づけていき、後少しで触れようとした直前――だった。 ――ガッ……!! 『きっ……きゃあああっ……ひな……たっ……ひなた……っ……ひなたー……』 唐突に、どこかから――白いボールのような物が母さんの顔を目掛けて飛んできたのだ。それは、穏やかな笑みを浮かべていたままの母さんの顔に直撃し――そして、その直後……母さんは僕の名を呼びながら、痛そうなのに――苦しそうなのに――満面の笑みを浮かべたまま消え去ってしまったのだった。

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