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第112話

※ ※ ※ 長い長い夏休みがあけて―――僕は慌てふためきながら学校へ行く準備に追われていた。既に、父さんは仕事に行き、居間には日和叔父さんしかいない。日和叔父さんは外へ仕事に行く事はないため――この忙しい朝っぱらでさえも優雅に珈琲を飲みつつテレビを見入っているのだ。 【さて、次のニュースです……土○○村の――自警……の男性が……沼で……遺体となり……発見され―――】 ピッ………… 【―――夏も終わりに近づきつつありますが……最近……蚊が……大量に……生しており……外出の際には……充分に注意を―――】 「日向――お前…………こんな場所で見入っていてもいいのか?夢月くんが――待っているんじゃないのか?」 「えっ…………あ、もう……こんな時間っ……!?それじゃあ、叔父さん……いってきまーす……」 「ああ……日向――こっちを向け……っ……」 と、乱暴にランドセルをかついで居間から慌てて出て行くために身を翻そうとした僕に向かって、テレビの方からクルッと体を振り返らせた日和叔父さんが声をかけてきたため不思議そうな表情を浮かべつつも条件反射的に叔父さんの方へと向いてしまう単純な僕―――。 ぺろっ………… 「……ひゃっ…………!?」 「ここ、ジャムがついていたぞ……きちんと確認しておけ……それと……」 口の端についたジャムを日和叔父さんはその舌でペロリと舐めると、そのまま驚きの声をあげてしまった僕の反応に対して――ふっ……と笑みを浮かべてから――やけに真剣な表情を浮かべてきた。 「……蚊には―――くれぐれも気をつけなさい……あと、車にもだ」 「……えっ…………!?」 ぶつかれば死に繋がりかねない車はともかくとしても、何故―――蚊に気をつけなければならないのだろうかと不思議に思いつつも、そろそろ本気で遅刻してしまいそうな僕は慌てて玄関へと駆けて行くと夢月が待っている待ち合わせ場所に向かって急いで走って行くのだった。

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