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第115話
※ ※ ※
ザァァ~……
ザァ~…………
雨が降っている―――。
僕の憂鬱さを丸ごと表現しているかのように勢いよく降り続ける雨は、先程から増してきた風も相まって傘を差している僕の体を容赦なく濡らすのだ。
後ろを着いてくる僕の事なんか気にもならない、と言わんばかりに小見山くんは夢月と楽しげに話しながら――ずん、ずんと雨のせいでぬかるんだ泥道を歩いて行く。
これは勿論――夢月のせいじゃないのだけれど時々、気まずさのせいからか夢月が遠慮がちにチラッと何度か僕の方を振り向いてきて――その度に自分の存在の情けなさに襲われてしまうのだ。
(で……でも……ここで二人よりも先に家に帰ったら――小見山くんから何をされるか……分からないしっ……先生からも香住くんにプリントを届けろって言われてるし……逃げるわけにはいかないや……それにしても――ひどい道だな……っ……)
と、心の中でソッと呟いてから尚もぬかるんだ道を歩いて行こうとした時―――、
ぬっ……ずりゅっ…………!!
「あ……っ…………!!?」
どしゃっ……と前方に倒れ込んでしまった。
そうならないように細心の注意を払っていたというのに――情けないことにぬかるんだ泥道に足をとられて転んでしまったのだ。
ふと、泥だらけになってしまった僕の前に気配を感じた。そして、その人物が転んでもしまった僕に対して手を差しのべてくれているのも何となく分かった。
「あ、ありがとう…………夢月……っ…………!!」
てっきり、夢月が僕に対して手を差しのべてくれていたと思い込んでいた僕ら――差しのべてくれていた手を取り体をゆっくりと起こす。
「ったく……お前――体だけじゃなくって目も節穴なのか?俺は夢月じゃねえよ……なんかあれば夢月、夢月って――気持ち悪いんだよ……っ……」
「……っ……小見山くん……ご、ごめんなさいっ……」
「いちいち、謝んなよ……つーか――お前の服、泥まみれじゃねえか……っ……」
慌てて、ぴったりとくっついている小見山くんの体から離れようとした僕―――。
ぶつ、ぶつと文句を言いつつも泥まみれでびしょ濡れになっている僕の服の事を気にかけてくれている小見山くん―――。
「おい、とりあえず―――隠れ家に着くまでは――これで拭いとけよっ……」
「う、うん……っ…………!?」
僅かに沈黙が流れてしまい、気まずくなってしまった時、ふいに小見山くんがランドセルの中に入っていたタオルを僕に差し出してくれたのだが―――、
「……あっ…………んんっ…………」
「…………っ……!?」
その時、偶然にも小見山くんの手が雨のせいで濡れてぴったりと肌に張りつき桃色の乳首が見えそうになっている白いシャツの上からかすってしまい、思わず変な声をあげてしまう僕なのだった。
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