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第117話

※ ※ ※ ※ 「お、お邪魔……します……っ……」 「これは、これは……まさか――このような雨の日に坊っちゃまの御友人がいらしてくれるとは……っ……光栄でございます。さあ、此方へどうぞ…………」 西洋館の中に一歩足を踏み入れるなり――黒い燕尾服を身につけていたり、ヒラヒラの白いエプロンを付けて畏まっている多くの執事やメイドさんが僅かばかり緊張している僕らを出迎えてくれた。 改めて、周囲をぐるりと見渡してみても此処は普段僕らが暮らしている世界とは格段に別世界ともいえるくらいに豪華絢爛なのだ。 ―――キラキラと金色の輝きを放ち続けながら天井に幾つもぶら下がっているシャンデリア。 ―――ホールの両脇に存在していて赤い絨毯が敷かれた大理石の階段。 ―――そんな階段の真下にズラリと並び頭を下げて礼をしている何十人もの執事やメイドさん達。 ―――広いホールの四方の壁を埋め尽くしてしまう程の海外書籍の本棚や作者の名前すら知らないような西洋絵画の山たち。 とにかく―――普段は田舎に暮らしている僕らでは、まず滅多にお目にかかれない程に珍しい物達がこの館内には存在しているのだ。 流石に、いつもは威張っていて格好付けたがりの小見山くんでさえ物珍しそうにそれらを見つめている。そして、勿論――夢月も外国製の珍しいドールや装飾品といった物に興味を引かれて熱心に見つめながら時折感心しているのだ。 「…………」 と、その時―――急に階段の方向から強烈な視線を感じて僕は慌ててそちらへと目を向ける。其処には真珠のように白く艶かしい両足を半ズボンから覗かせて立っている一人の少年が居るのだが――シャンデリアの光に当たっていないため顔の表情までもは理解出来ない。 (あ、あれって……香住くんじゃないか……って―――あ……っ…………) そんな事を思いつつ、ボーッと階段の方向へ目線を向けていた僕だったが唐突にその少年が身を翻えして二階へと駆けて行ったため衝動的に階段を登って彼を追いかけようとするのだった。

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