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第118話
「待って……っ……待ってったら……香住くんっ……!!」
「…………」
僕は二階の長く薄暗い廊下を駆けて行く香住くんの後を追いかけていく。すると、彼がある部屋の中に入って行く姿が見えた。
背後から声をかけてくる僕の事など一瞥もせず、ひとことも言葉を発せずに―――。
(あそこの部屋に入っちゃった……ど、どうしよう……勝手に入っても……いいのかな……)
と、僕が部屋から少し離れた場所で立ち尽くしているとギイィッと扉が軋む音が聞こえてきて――思わずビクッと体を震わせてしまう。
部屋の中にいるのは、あまり交流がなかったとはいえクラスメイトの香住くんだと分かりきっているのだから―――そこまで怯える必要なんてないはずなのに___。
トン、
トン、トン…………
「か、香住くん……ごめんね……入るよ?」
「…………」
やはり、急に開いた扉を軽くノックして問いかけてみても―――中から返事がない。もちろん、ここで何もせずにこの西洋館から出ていくという選択肢もあるのだ。
しかし、プライドが高く自己中心的な小見山くんが絶対に許す筈もないだろうし、それに担任の鬼村だって許してくれないのは鈍感な僕にだって分かりきっている事だ。自分の思い通りにいかないと鬼のように恐ろしくなる二人から理不尽に怒られてしまうのも分かりきっていたため、仕方なく僕はため息混じりに憂鬱そうな表情を浮かべると未だ半開きとなっている扉の金色のドアノブをギュッと握り締めてから意を決して開けるのだった。
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