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第122話

―――口の中に鉄の味が広がる。 何故、こんなことをしてるのだろう―――と不思議に思う半面、香住くんの太腿から流れている血を頭の片隅で美しいとさえ思ってしまった僕は吸い寄せられるかのように――ごく自然とこの奇行ともいえる行為に陥ってしまっていた。 「んちゅ……ちゅっ………んむっ……んっ…………んんっ……」 まるで麻薬の如く何ともいようのない高揚感に包まれながら、香住くんの太腿から流れる血を淫靡な水音を響かせつつ吸い付くしてしまった僕は名残惜しくも唇を太腿から離す。 「日向くん…………お風呂場に―――行こうか?」 「え……っ…………!?」 相変わらずニコニコしている香住くんに言われて―――ハッとする。 僕のズボンの中(正確にはパンツの中)が―――いつの間にかぬりゅ、ぬりゅと濡れていた。香住くんの血を無我夢中で吸っている内に―――勃起しただけじゃなく射精までしてしまっていたらしい。 それを察知した途端にもじ、もじと身を捩らせながら顔を真っ赤に染めてしまった様を見て香住くんはくすり、と悪戯っぽく微笑むと半ば強引に僕の腕を引っ張ると―――そのまま異国情緒溢れる部屋から出て行き浴室へと向かうのだった。 ※ ※ ※ 「おい―――待てよ、てめえら……仲良しこよしで何処に行く気だよっ……!?」 「……っ…………こ、小見山くん……」 「…………」 香住くんから、半ば強引に腕を引っ張られて強制的に浴室へと連れて行かれようと二階の廊下を僅かばかり早足で歩いていた時の事だ。 明らかに苛立ちを顔に滲ませている小見山くんが―――背後からもう片方の腕を引っ張り、浴室へと向かう僕と香住くんの動きを止めてしまうのだった。

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