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第123話
「嫌だな……小見山くん―――ただ、日向くんの服が泥で汚れてるからお風呂場に行こうとしてただけだよ……ねえ、日向くん……?」
「う、うん…………香住くんの言う通りだよ……だから、そんなに彼を怒らないで……っ……小見山くん……」
今にも香住くんへと殴りかかりそうな程に強烈な怒りを露にしたままの小見山くんに対して僕は彼の怒りを静めるために必死で説得しようと試みる。
―――しかし、
「…………はっ……じゃあ、これは何なんだよ!?こんな所を厭らしくおっ勃ててるくせして……っ……しかも、さっきの部屋で――てめえが小見山の野郎の太腿まで舐めてたくせして……それでも何もしてねえっつーのか!?」
「やっ……やめ……やめてよっ……小見山くん……っ……」
むぎゅっ…………と未だに勃起してしまっているモノを怒りを露にしたままの小見山くんにズボンの上からとはいえ握られてしまい――顔を真っ赤に染めながら脱力してしまったせいで小見山くんの思惑通りに足を止めてしまった。
「……小見山くん―――日向くんが……君に触られるのを嫌がってるよ?」
「……っ…………!?」
ドンッ…………!!
とうとう、怒りに支配されてしまっている小見山くんは穏やかな笑みを浮かべたままやんわりと諭そうとしている香住くんを突き飛ばしてしまう。そのせいで、小見山くんは呆気なく床に尻餅をつくようにしてワインのように真っ赤な絨毯の上に倒れてしまった。
と、そんな香住くんの方から視線を感じた―――。
僕に救いを求めているかのように―――香住くんは静かに涙を溢す。ただの涙なんかじゃなく―――血の涙を流しているかのように僕の目に映ったのだ。
ツツー……と先程の部屋で香住くんの血を目にした時のように強烈な高揚感が僕に襲いかかってくる。そして、小見山くんの存在なんて忘れ去ってしまったかのように、救いを求めているかのように僕を見つめてくる香住くんの方へと吸い寄せられていき―――、
「……んっ…………んんっ…………んむっ…………」
「お、おいっ……日向―――てめえ……何してっ……」
何の躊躇もなく―――僕は香住くんの頬へ唇を寄せて先程のように無我夢中で白い雪のように美しい彼の頬肉に吸い付くのだった。
すると、小見山くんが微かに口角を上げて愉快げに僕と呆然としている小見山くんへと不気味に微笑みかけた後―――、
「…………お風呂場は―――その突き当たりを左に曲がればあるよ……どうぞ、二人っきりで――ごゆっくりしてきて?」
小見山くんから突き飛ばされてせいで床に倒れてしまったというのに、妙に落ち着いた声色で淡々と香住くんは言ってから身をゆっくりと起こすと―――そのまま、優雅な足取りで元きた道を戻って行くのだった。
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