125 / 278

第125話

※ ※ ※ ※ その後の帰り道で僕らは互いに無言で相合い傘をしながら雨が降り続けてぬかるんだ道を歩いていた―――。 それもこれも―――二階に上がったっきり、なかなか戻って来ない僕と小見山くんに対して痺れを切らした夢月が先に帰ってしまったせいだ。 (まいったな……小見山くんの顔が―――マトモに見れない……きっと……あの浴室の中で……あんなことをしたせいだ……っ……) 僕は小見山くんの手によって―――シャワーを浴びている最中に下半身のモノを擦られ、しかも射精してしまった。幸いにも、それ以上の事はしなかったけれど―――それでも、気まずいものは気まずい。 『俺は……っ……お前の事が……っ……』 ふっ…………と口にするのでさえ躊躇してしまうような行為を終えてから少しした後で小見山くんが口にした言葉が頭の片隅によぎる。あの時、彼は僕に何と言おうとしていたんだろうか――と気になりながら隣にいる彼の顔を見上げる。そうしたのは、僕の身長よりも小見山くんの方が遥かに高いためだ。 「な、何だよ……っ……ぞんなに、ジッと見てんじゃ……ねえよ……」 「で、でも…………小見山くんが―――何も話してくれないから……っ……ねえ、小見山くん―――シャワーを浴びた後……僕に何て言おうとしたの?」 「そ、それは……っ…………」 と、小見山くんが不自然に戸惑いながら僕から目を逸らした時―――、 ブゥゥ―ン………… ブブゥ……ン…… 何処からか―――いや、おそらく割と近くの方から音が聞こえてきて、僕も小見山くんも途端に言葉を発するのを止めて音が聞こえてきた方角の方へと目線を向ける。 ―――その音は【腐望来の池】の方から聞こえてくる。 そして、好奇心という耐え難い快楽ともいえる感情に支配されてしまった僕と小見山くんは自然と【腐望来の池】へと足を運んでしまうのだった。

ともだちにシェアしよう!