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第128話
「おい、日向…………お前……俺と日陰兄さんに―――何か隠し事をしていないか?」
「隠し事なんてしていないよ―――叔父さん。それよりも、僕……明日は早めに学校に行かなきゃいけないから……今日はもう寝るね……おやすみなさい……父さんと叔父さん」
―――結局、僕は叔父さんの作ったハンバーグには、ほとんど手をつける事なく食器を流しまで持って行くと、そのまま自分の部屋へと戻ってしまった。
※ ※ ※ ※
バタンッ…………
勢いよく部屋の扉を閉めると―――机の上にある物がポツンと置かれている事に気付いた。
疑問など浮かべる間もなく、自然と引き寄せられるようにそちらへと歩んでいく―――。
ソレを目の当たりにした途端に、ドクンッ…………と心臓が高鳴った。そして、それと同時に稲妻が如く全身に走る快感を含んだ【痒み】という感覚も尚更強く抱いてしまう。
香住くんが見せてくれた―――羊皮紙に何も綴られていない風変わりな本だ。
(いつの間にか持ってきてたなんて……っ……でも……これで、また…………)
香住くんの家だという風変わりで面白い【異国情緒溢れる館】へと赴く口実が出来た___。
思わず口角をあげて微笑みながら本を開くと、頭の中で香住くんとの甘いひと時を描きつつ―――指先でペラ、ペラとページを捲っていく。
「…………?」
すると、ある一ページにさしかかった時―――ある違和感を抱いてしまった僕はピタリとページを捲る手を止めてしまうのだった。
2㎜にも満たないくらいに小さな小さな黒点が__そのページの真ん中よりも僅かに右上という場所に存在している。
パッと見ただけでは単なるインクの染みかと思ったのだけれど、その小さな小さな黒点は僕が目線を動かせば動かす程に移動してふよ、ふよと漂い続ける。
薄緑色の壁へ向ければ、壁へ―――。
電灯の光の方へ向ければ、光に溶けこむかのようにそちらへ―――。
けれど、それも暫くすると___フッ……と唐突に何処かへと消え去ってしまった。
しかし、相変わらず僕の全身を襲う【快感を含む強烈な痒み】は消え去ってはくれず―――むしろ強くなる一方だ。
フッ……と瞼を閉じれば、思い出すのは香住くんの穏やかな笑顔___。
【快感を含む強烈な痒み】という、どうにも抗えない感覚に支配された僕は―――とうとうズボンの上から勃起しきっているモノに触れると彼を思い浮かべながら自慰に耽ってしまうのだった。
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