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第134話
「こ、小見山く……っ……!!?」
「いいから黙ってろよ、この嘘つき野郎が……っ……」
と、扉を執拗に叩いていたのが小見山くんだと分かって驚いた僕が彼の名を呼びきる前に―――ドンッと今度は個室の壁に強引に押し付けられてしまい、あろうことか僕を目の敵にしていた彼によって無理やりキスされてしまうのだった。
かなり、息苦しい―――。
「……んっ…………んむっ…………んちゅっ……」
大人がするような舌を互いに吸い合う深いキスをされた僕は快感と不快感とが混じり合った不思議な感覚を抱きつつ、小見山くんの強引なキスから解放された事に対して安堵する。
―――しかし、
「おい、嘘つきないんらん野郎……何で香住の名前を呟きながら……あんな事をしてたんだよ?」
「あ、あんな事って…………何のこと!?」
「とぼけんじゃねえよ……何で香住の名を呼びながらオナニーしてたんだって……聞いてんだよ」
―――やっぱり、小見山くんにばっちりバレてしまっていたらしい。とぼけようとしたけれど、僕がこのまま誤魔化しても__どうせ彼は僕の口から真実を告げるまで諦めようともしないのだろう。
ふうーーー、と軽くため息をついてから訝しげに僕を覗き込んでくる小見山くんの顔を見上げてからジッと彼の瞳を見据える。
「…………確かに、僕はここでそういう事をしてたよ。でも、僕が香住くんの名前を呼びながら―――そういう事をしていたからって……僕を散々からかってきた小見山くんには関係ないよね?」
「…………お前、やっぱり―――なんか、変だぞ。まさか、今日の放課後も__アイツの家に行くつもりなのか!?」
「そうだよ…………だって、小見山くんといる時よりも……香住くんと過ごしている時間の方が……ずっと、ずっと楽しいもん。あの館にいると……ずっと、ずっと……幸せに……っ……」
ダンッ…………!!
すると、急に小見山くんが壁を強くたたいた。
あまりにも唐突な事が起きたせいで、ビクッと体を震わせつつ、怯えた表情を浮かべながら、明らかに怒っている小見山くんを見つめていると―――彼は小さくため息をついてから、どことなく呆れた様子で僕を見つめ返してくるのた。
「あ~…………気にすんじゃねえぞ。今のは、てめえがどうこうとかじゃなくて……壁にいるコイツがウザいから叩き潰しただけだ。それより、今日も香住んとこに行くんだろ?だったら―――俺も着いて行くぜ。言っておくが、拒否したら今のてめえのオナニーのこと言いふらしてやるから……分かったか!?」
「う、うん…………分かったよ……っ……」
小見山くんが叩いた壁には、一匹の蚊が潰れピクピクと弱々しく動いていたーーー。
本当なら香住くんの家には一人で行きたかったし小見山くんに同行されるのは心の底から嫌なのだけれど―――小見山くんなら夢月やクラスメートや先生などに言い兼ねない、と不安になった僕は仕方がなくコクッと頷いて了承してしまうのだった。
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