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第137話

キョトン、とする僕の耳元へと―――血で染まった柘榴のように赤い己の唇を寄せて香住くんはЖγΥ&Ψ語で、こう言うのだ。 「《ロギン》Ω―――ナヒータ……ツキィム……ラキム……йγё__スカルミ (生け贄は―――日向……夢月……鬼村……そして___香住) 」 「___小見山くんは!?小見山くんも……さっき君が―――僕達と【前世】で繋がってるって言っていたじゃないか……っ…………」 「ナヒータ…………君は―――まだ全てを分かっている訳じゃないみたいだね。小見山……いや、ヤミ・マゴヤは―――《ロギン》として強引に選ばれた我らにとって忌々しい存在だというのに……っ……思い出して、思い出すんだ___ナヒータ……かつて、ЖγΥ&Ψでヤミ・マゴヤが何をしたか……」 すっ…………と香住くんの片手が不安で怯えて潤んでいる僕の目を包み込むように覆ってくる。そして、反射的に目を瞑ってしまった後で瞼の裏に意図せず自然とある光景が浮かんでくる。 ―――いつだったかの悪夢で見た光景だ。 ヤミ・マゴヤ(小見山)が香住くんの部屋に置かれていた不気味で怒りを象徴するかのような仮面を被りながら、ナニカに向かって「×××……×××―――×××……」とボソボソと呟きながら土下座しつつ拝んでいる。 ヤミ・マゴヤ(小見山)に対して円状に取り囲みつつ平伏し、ナヒータ(僕)、ツキィム(夢月)___ラキム(鬼村)、スカルミ(香住くん)が土下座しつつガタガタと小刻みに体を震わせながら怯えている。 そうだ、そうだった___。 唐突に、僕の瞼の裏に出てきた光景―――。 それは___かつて、前世で僕ら四人の《ロギンと蔑まれていた生け贄》が、【ЖγΥ&Ψ(大いなる血)】と現地民に名付けられていた村でヤミ・マゴヤ(小見山)にどのようにして命を奪われたかという経緯が物語られていた。 『×××―――×××!! ロギンф……$φΥΘ__!! (神―――神!!生け贄に……救いを__!!) 』 一際、大きなヤミ・マゴヤの声が僕の脳裏に浮かぶ光景の中で響き渡る。それと共に、円状に彼を取り囲んでいた野蛮そうな男達(みんな赤い歯を剥き出しにして目を吊り上げている不気味な仮面を被っている)が顔をロギンに選ばれた僕ら四人に一斉に向ける。 そして、そして___、 「ナヒータ……君とツキィム___そして、現世では水に沈んだラキムは見せしめのように火炙りにされ……そして、僕ことスカルミは―――神の代行者たる野蛮で醜悪な村の支配者ヤミ・マゴヤによって【ロギンの歯】と呼ばれる幾人もの生け贄の血《ザキマ》を吸った忌々しい刃物で滅多刺しにされ……その世での命の炎を消し去ったんだ……けれど、僕は―――運が良かった……×××に好かれたんだ___つまり、これでヤミ・マゴヤ……いや、今の世では小見山くんか……あいつに一矢報いることが出来るのさ」 静かな―――まるで氷のように冷たい香住くんの怒りの感情を必死で抑えつけているような低い声が僕の耳の中へと聞こえてくる。 そうか___僕の悪夢に出てきたあの【ロギンの歯】と呼ばれる鋭い刃物で顔を傷つけられていて真っ青な顔をしていた少年は、今まさに僕の目の前にいて【前世】でも縁のあった香住くんだったのか、とボンヤリと思ったのも束の間―――、 「う、うわぁぁぁぁ……っ…………!!」 と、階下から正気ではないくらいに凄まじい音量の小見山くんの叫び声が聞こえてきて僕は慌てて香住くんから抑えつけられている体を起こそうと試みるのだった。

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