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第140話

「ねえ、日向くん…………病みあがりの君に――こんな事は言いたくないんだけどさ……ボクに何か隠し事をしてない?」 「…………隠し事って?」 怪訝そうに見つめてくる夢月が―――ぐいっとすぐ近くまで寄ってきて、ぎゅうっと僕の手を握りながら不安げな声色で尋ねてきたため、僕は首を傾げつつ問い返してしまう。 「何か……香住くんの家に三人で行ってから―――ちょっと変だよ。香住くんと……何かあったの?」 「か……すみ……くん?」 ああ、そうだった―――。 僕は香住くんの家に一人で行って__そして、そして…………、 駄目だ……これ以上思い出そうとすると___靄がかったみたいに頭の中が途端に真っ白になる。 「夢月…………僕は大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう。でも……香住くんと何か特別な事があった訳じゃないんだよ……それに、小見山くんは途中で一人で勝手に香住くんの家から出て行っただけなんだ。自分勝手でワガママな小見山くんらしいよね……ってことで、夢月はもう遅いから帰った方がいいよ……また、明日も学校だからさ……」 「本当に……っ……!?本当に、それだけなんだね___そうだよね、心友の日向くんが__ボクに嘘なんてつくわけがないもんね……ボクは―――君を信じるよ……日向くん?」 ぎゅうっと僕が夢月の手を握り返した事で安堵して信頼してくれたのか彼はニッコリと満足そうに微笑みながら言ってくれた。 何故だか、その夢月の言葉を聞いて胸にトゲが刺さったかのような不快ともいえる感覚を抱きながらも―――僕はそれを夢月に悟られないように必死に笑みを浮かべつつ部屋のドアから出て行く彼を見送るのだった。 ※ ※ ※ そして、夢月を微妙な気持ちを抱きつつ見送ってから少したった頃に、今度は叔父さんが一人で僕の部屋に入ってきた。 僕の好物であるバニラアイスを持ちながら、少し気だるげに部屋を訪れた叔父さんの剥き出しとなっている顔や両腕の雪のように真っ白で綺麗な肌に、幾つかの大小様々な穴が点々と開いている事に気づいて一瞬だけ呆気にとられてしまった。 でも、これもきっと―――熱にうなされていた錯覚のせいだろうと僕はすぐに思い直すのだった。

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