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第152話
※ ※ ※
放課後の旧校舎は時間や空模様に関係なく不気味だ―――。
そもそも、今は旧校舎で授業は一切行っていないにも関わらず何故未だに取り壊されていないか不思議で仕方ないし―――それ以上に一歩一歩足を踏み込む度に老朽化した木の床がギシ、ギシと音を立ててるせいで僕の不安はピークに達してしまう。
隣に夢月がいてくれて良かった、とホッとしたがよくよく考えてみれば、夢月が旧校舎に来ようと言わなければ今の不安は無い訳で複雑な表情を浮かべつつ夢月の顔をジトーッと見つめてしまう。
「本当に呪われたタイムカプセルなんてあるのかな……夢月―――呪われたタイムカプセルの曰く付きの話しって何なの?」
「えっとね……噂によると―――いじめで自害した女の子が……自分をいじめてた子たちに向けてタイムカプセルを埋めたんだって……でも、結局いじめっ子たちは呪いにかけられたみたいに立て続けにこの世から消えちゃって……結局、タイムカプセルは今までずーっとこの旧校舎のどこか……というか、中庭に埋められたままらしいよ。でも、呪いの力が強くって幽霊となった女の子は――いじめっ子とか関係なしに災厄をもたらすらしいよ?ちょっと、試してみたいよね~」
「ええ……っ……やだよ、そんなの……っ……」
「大丈夫、大丈夫……日向くんに何があろうと……絶対にボクが守ってあげるから……だいたい、その噂が本当かどうかさえ分からないじゃん?あれれ、もしかして……日向くんってば怖がってる?普段―――あんな目にあってるくせに……」
少しムッとしながらも見かけによらず負けず嫌いな日向は無言で旧校舎の中庭を目指して歩き続ける。数日間、雨が降り続けたせいでジメジメとした湿気が旧校舎の校内にまとわりついているように感じた日向は何ともいいようのない嫌悪感を抱いたものの陰気くささに包まれている校舎内から中庭に出てしまうと――すぐにそんな憂鬱な気分も吹き飛んでしまった。
数日前の雨続きの様が嘘みたいに、まるでアクアマリンのように澄み渡る青空の下で―――ギラギラと照りつける太陽の光を浴びたからだ。そうかといって、真夏のように灼熱という訳ではなく程よい風が体へザァッと吹きつけてくる。
ざっ……と中庭の様子を見渡きてみたところ今までと何ら変わった様子はないように思えたが人間の心理とは不思議なもので曰く付きな場所などあるわけがない、呪われたタイムカプセルなどあるわけがない、と心で思って無理やり納得してはみるものの、その反面で【絶対に噂の真意を確かめてやる】【呪われたタイムカプセルを本当に見つけ出したら注目されるかもしれない】といった思いがふつ、ふつと体の底から涌き出てくる。
「夢月―――もし、僕が先に呪われたタイムカプセルとやらを見つけたら――好物の瓶コーラ20本驕ってね」
「え~……小学生なのに賭け事するなんて日向くんってば悪い子だねぇ……じゃあ、もしもボクが先に見つけたり、日向くんが見つけられなかったりしたら……ボクのお願い聞いてよ……探してる間にお願い事を考えておくからさ」
そして、指切りげんまんをする僕と夢月―――。
―――結局、何時間探しても【呪われたタイムカプセル】とやらは見つけ出す事が出来なかった僕はガックリと肩を落としてしまう。
「残念だったねえ……日向くん。でも、まあ……人の噂なんてサイコロの目みたいにコロコロ変わるものだし……それに、呪いのタイムカプセルは――ここじゃないどこかに本当に存在するのかもよ?でも、約束は――約束!!ん~と、じゃあねえ……次の日曜日にボクとデートしてよ……二人じゃ寂しいから、他の人も誘っとくね」
「え~……デート~……?」
夢月との賭け事に負け、気の抜けた言葉を返す僕の様をからかうように見つめながら夢月は心の底から愉快げに頬笑むのだった。
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