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第156話
※ ※ ※
ポーン……ッ……
「あっ…………!?」
「ごめーん、日向くん……手元が狂っちゃって変な方向に行っちゃった……悪いけど、取ってきてくれるー?」
あれから、僕らは皆で川に飛び込みバシャバシャと水の掛け合いっこをしたり、魚とりをしたり藤司さんが用意してくれていたスイカをシャクシャクと音をさせながら豪快に食べあったりと夏の川遊びを存分に楽しんでいた。
しかし、さすがに少し泳ぎ疲れた僕らは本格的に川で泳ぐのを休息させる意味でビーチボールで遊んでいたのだけれど―――ふいに夢月が僕に向かって投げたボールが明後日の方向へと勢いよく飛んでいき、川から少し離れて奥の方にある雑木林の中にコロコロと転がっていってしまったのだ。
(もう……夢月ったら―――コントロール悪いんだから……っ……こうなったら後で瓶コーラ意外の僕の大好物でもある白・虫・夢のケーキを奢らせて……って―――なんか、ここ……凄い不気味……)
あわよくば、夢月に【白・虫・夢】という変わった名前の古ぼけた喫茶店のケーキを奢らせてやろうと邪な考えを抱きつつ、僕は転がって行ってしまったビーチボールを取りに行くべく仕方なく一人で昼間だというのに薄暗い雑木林の中へと駆けて行く。
辺り一面が大木に囲まれている雑木林は―――琥珀色の太陽の光が降り注いでいないせいか、薄暗い。そのせいで、まるで夜のような雰囲気を醸し出していて―――また、外界の鳥の囀りや川のせせらぎといった音も余り聞こえてこないため静寂に包まれているのが不気味さを見事に助長してしまっているのだ。
「ええっ……と……確か、こっちの方に……っ……」
と、ビーチボールを探しながら歩いていた僕だったが、ふいに雑木林の中に存在するには似つかわしくないあるものを見つけてピタリと足を止めてしまった。女の子が持つような可愛いらしい人形がポツン、と落ちているのと―――そのすぐ側に雑草が生い茂っている古ぼけた井戸がある事に気づいたのだ。人形はピンク色のドレスを身に付けているものの、ボロボロで所々穴があいていて尚且つ土まみれとなっている。
しかも、最近降り続いていた雨のせいでジメジメしているせいかは知らないけれどナメクジが何匹か集まっていて―――とても、それを拾いあげる勇気など出なかった。
しかも、その古ぼけた井戸の脇に―――【家厄天寿(かやくてんじゅ)】と刻まれた石碑がある事に気づいたのと、人形がポツンと落ちている真下の土が不自然に盛り上がっているという異様な光景に好奇心を刺激されてしまった僕はビーチボールの事など頭の中から忘れ去り、ふつ、ふつと湧き上がる好奇心に抗えきれずに、そのまま不自然に盛り上がった土の方に歩み寄っていくとその部分を掘り返すために身を屈めてしまうのだった。
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