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第169話
※ ※ ※
「ん……っ……」
とても、長い夢を見ていた気がする―――。
早く目覚めたいような、それでいて安堵感を抱いて―――いつまでもそこの中にいたいような奇妙な感覚がする夢だったのはボンヤリと覚えている。
「あ、あれ……っ……みんな……どうして僕を……心配そうに見つめてるの?」
僕がフッと目を覚ました時―――真っ先に飛び込んできたのは、心配そうに覗き込んでくる皆の顔だった。夢月はもちろんのこと、僕にとっては兄のような存在の藤司さんや弟のような存在の雪司くん―――それに、僕が大好きな日和叔父さんや涙くんでいる小鈴の姿もある。
しかし、ふと―――小魚の骨が喉にひっかかったような、もどかしさを伴う違和感に気付いた僕はゆっくりと身を起こして周りに集まっている皆の様子を見渡してみる。
「ど、どうしたの……夢月くん……もしかして、まだ具合が……っ……」
「…………ねえ、夢月……父さんと―――カサネは何処にいるの?」
僕の大事な家族である父さんと、すでに家族同然といってもいいカサネがこの場にいない。特に、僕が体調を崩せば真っ先に駆けつけてくれるはずの父さんがこの場にいてくれないのはとても悲しい事で奇妙な事だ。
確かに、かつて日和叔父さんが戻ってくる前(カサネや小鈴が同居する前)であれば多少ギクシャクとした関係だったからおかしくはないけれど―――それもなくなり、今は母さんが生きていた頃みたいに関係が良好になったというのにぶっきらぼうで神経質だけど本当は優しい父さんがこの場に来ないなんてあり得ない事だと僕は思った。
それは、日和叔父さんの下僕となり何だかんだで僕を気にかけてくれるカサネにもいえる。
すると―――、
「カサネ……って……誰、それ?それに、日向くん……君のお父さんは……」
「……えっ…………!?」
カサネと共に過ごした時間が割と多い夢月が―――怪訝そうに首を傾げながら尋ねてきたのだ。しかも、何故だか夢月は父さんの事となると途端に気まずそうな表情を浮かべて僕から顔を逸らしてしまうのだった。
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