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第175話

【マタ……オマエに……カイラクヲ……アタエテヤル……ウレシイ……カ?】 「う、うれしい……うれしいよぉ……っ……」 あまりの快楽にメロメロになってしまっていた僕の頭は―――意思に反して当然のようにそう答えてしまう。 その途端に【黒い奴】が僕の唇を、ある筈がない唇で塞ぐと―――そのまま普通の人間よりもネチャネチャとした粘液に覆われた舌で僕の舌を捉える。そして、そのままディープキスするかのように愛撫されてしまうのだ。 気持ち悪い、おぞましいと頭の中では分かっているのに―――体はその不埒な行為に対してビクン、ビクンとひっきりなしに震えてしまう程に喜んでしまっている。 【ヨシ、ヨシ……イイ子ダ……ジワリ、ジワリ……オイツメテヤル……サイゴニハ……オマエハオレノモノ……】 僕の耳元で言い残し―――【黒い奴】は、消え去った。 しかし、【黒い奴】が消え去っても僕の脳天を突き抜けるかのような快感は消え去ってはくれず―――むしろ、最初よりも益々強くなっていった。 ※ ※ ※ 「日向―――お前、昨夜はよく眠れなかったのか?」 「…………何で?」 翌朝、僕が起きるより前に朝ごはんを用意してくれていた叔父さんが急に聞いてきたものだから、僕は呆気にとられてしまった。睡眠不足どころか―――まるで、心の引っ掛かりがすっかり無くなってしまったかのように、スッキリしているというのに。 「いや、顔色が悪いから……そんな風に感じただけだ……それよりも、お前……昨日は日陰兄さんがどうとか言っていたが……日向、お前の父さんはな……」 「日陰?僕の父さん……?誰、それ……っていうか……僕の父さんは―――日和さんでしょ?確かに途中まで育ててくれていたのは日陰とかいう人かもしれないけど……僕の父さんは日和さんだけ……そうでしょ、父さん……それよりも、今日も美味しい朝ごはんを作ってくれて……ありがとう!!いってきまーす!!」 日和さんが丹精込めて作ってくれた朝ごはんを味わって食べ終えた後、着替えやら歯磨きやらをし終えた僕は照れくさそうに今まで育ててくれて感謝してもしきれない【日和父さん】へとお礼を言うと元気よく我が家を出て行く。 そして、いつもの待ち合わせ場所で痺れをきらして待っているであろう夢月の元へと急いで駆けよって行くのだった。

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