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第180話
※ ※ ※
「ねえ……日向くん―――さっきは何で、小見山くんにあんな事したの?いつもの日向くんらしくないよ……そうだよね、小見山くん?」
「……っ……し、知らねえよ……っ……てか、俺は別にきにしてなんかねえし……ただ、その……あんな木下を見るのは始めてだから気になっただけだ」
「…………」
その後、成り行きからか―――明日の遠足のお菓子を買いに行くのに小見山くんまで同乗する事になり、僕らは三人で夕日に包まれ橙色の日が照らす田んぼ道をてく、てくと歩いていた。
正直、夢月が痺れを切らして僕を探しに来てくれて助かった。もしも、夢月が来なかったら僕は―――あのまま小見山くんに酷い怪我を負わせてしまってしたかもしれない。幸い―――といっていいかは分からないけれども、小見山くんの怪我の状態は僕の爪が引っ掛かり口角に引っ掻き傷が出来るくらいに済んだため大事にはならなかった。
それでも―――小見山くんの口角からは血が滲み出ている。ここにきて、一気に罪悪感が膨れあがり申し訳なさに押し潰されそうになった僕はズボンからハンカチを取り出すと、道の途中にある湧き水でハンカチの一部を濡らして小見山くんの傷付いた口角へとピトリと当てる。
「だから―――気にすんなって言ってんだろ。こんなもん、唾つけときゃ治るっつーの……でも、ありがとうな」
「あのさ、どうして……小見山くんが謝るの?悪い事したのは―――僕なのに。それに、僕は小見山くんのこと誤解してた。小見山くん、本当はとっても優しいんだね」
「ばっ、ばかじゃねえの……俺は―――優しくなんかねえよ。ただ、俺は―――お前の事が……その……気になるだけだ!!」
そう言うや否や、ぷいっ……とソッポを向いてしまった小見山くんに反して―――夢月は口元を緩めながらジーッと僕らのやり取りを見つめていた。口では笑っている風に見せているけど目は笑っていない。まるで、責めるように夢月は怒りのこもった飴玉みたいにまん丸い瞳を此方へと向けてくる。
彼は、夢月は―――僕に対して本気で怒っているのだ。
「む、夢月……っ……な、何で怒ってるの?」
「ん~……別に、怒ってなんかないよ?ただ、小見山くんと日向くんはいつの間に仲良くなったのかなぁって思っただけ~。日向くん、二股はダメだよ?日向くんには、ずーっと心に決めてる人がいるんでしょ?まあ、それはともかく―――早く駄菓子屋さんに行こ!!はい、仲直り~」
と、言い終えた後で満面の笑みを浮かべながら握手を求めてくる普段の人懐っこい夢月に対して安堵した僕は特に気にする事もなく、駄菓子屋へと向かって行くのだった。
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