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第182話

ゴトンッ………… と、背後から何か固い物が落ちる音が聞こえ―――僕は恐る恐る振り返った。何故、そんなにも怯えていたかというと、僕はかつて父と呼んでいた人と割とよく似ていて神経質な一面があり、部屋の中には最低限の家具しか置いていなかった。 自分でも馬鹿馬鹿しいと思いつつ子供の割に、地震が来るのを恐れて玩具等や本は置いておかないようにしていたのだ。 玩具や本といった細々した物は寝室とは別の部屋に置くようにしていたのだ。それに、壁掛け時計なども飾ってはいない。せいぜい、壁にヒーローもののアニメに出てるキャラクターのポスターが飾ってあるくらいだ。 (それなのに……何でこんなに固い物が落ちた音がするんだろう……それに―――何だか視線を感じる……っ……) ざわ、ざわと嫌な胸騒ぎがして心臓を早鐘のようにドクドクと鳴らしつつも―――凄まじい好奇心には抗えず、ゆっくりと背後へ振り向いた。 「……っ……ひ、ひいっ……!?」 布団の上で泥まみれになったチャーピー人形が此方を伺うようにして―――ちょこん、と座っていた。下半身が真っ黒になりドロ、ドロに溶けている。刃物か何かで抉りとられたせいで空洞にった右目部分からウジャ、ウジャとナメクジが蠢いている。チャーピー人形の胸元にナイフで突き刺さていてその部分には長方形の紙がひら、ひらとはためいているのだ。 その紙には―――【天呪→夏美】と書かれていた。 (このチャーピー人形……どこかで見覚えがある……そうだ、あれは……あれは……っ……) 僕が操り人形かの如く意思とは別に体が動き―――ゆっくりと異様な姿のチャーピー人形の元へと近づいていき、その人形を内心では「気味が悪い」と思いながらも半ば強制的に手に取った時―――、 「___なた、ひ、なた……起きなさい!!」 と、どこかで聞き覚えのある誰か(男の人)の懐かしい声が聞こえた。そして、その途端―――辺りの光景がぐにゃり、ぐにゃりと歪んでいくのだった。

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