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第188話

※ ※ ※ 「…………」 「…………」 かなり、気まずい―――。 よくよく考えてみれば、クラスで目立たずに無口で黙々と本を読んでいるような小見山くんと何を話していいのかすら分からない。今までは明るく朗らかな夢月や井森くんと矢守くんが一方的に小見山くんへ話しかけていたため―――ただでさえ昼間でも日が差さずに生き物さえ生息しているかも分からないような静寂に包まれている雑木林の中に重い沈黙が流れる。 川で泳いでた時には喧しいくらいに聞こえていた蝉の鳴く声も、まるでハサミで切り取られてしまっているかのように全く聞こえてこないのだ。 「おい、あれ……」 「えっ…………!?」 外界から切り取られてしまったかのように不気味な静寂に包まれている雑木林を二人きりで歩いている最中、ふと―――今までひたすら無言で黙々と歩いていた小見山くんがある場所を指指した。 長いこと手入れがされていないのか、名前すら分からないような雑草に覆われている古井戸だ―――。今にも得たいが知れないモノが這い出てきますよ、といわんばかりにそこにポツンと存在している。 そして、その側にまさ探しているビーチボールがコロ、コロと転がっていた。その時―――またしても、胸がざわざわする奇妙な感覚が襲ってきた。 (な、何だろう……前にもこんな光景―――見たことあるような……それに……この井戸の側に何かがあったような……何、何だっけ……) 古井戸の側には―――転がっているビーチボール以外に何もない。それなのに、何かが引っかかっている気がした僕はビーチボールを拾い上げるという目的は果たした筈なのに―――ふら、ふらと何かに導かれるように古井戸の中を覗き見ようとする。 すると―――、 「お、おい、このバカッ…………お前―――何してんだよ!?下手したら死んじまうだろっ!?」 「……っ…………は、離してっ……離してよ……っ……ここを覗かないと……」 井戸に吸い込まれるかのようにフラーッと覗き込む僕を何とかして引き離そうと、小見山くんはいつもの寡黙さが嘘のように慌てて僕の体を強い力で羽交い締めにしてくるのだった。

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