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第189話
「……っ……離して、離せって言ってるだろっ……この、根暗野郎め……僕は―――僕は前からずっとお前なんか大嫌いだったんだよ!!昔からチラ、チラと僕の方を見つめてきて気持ち悪い……っ……」
「…………」
どうしても体中から沸き上がる怒りを抑える事が出来ない。もはや、何に対して怒っているのか自分ですら分かっていないというのに―――僕の口からはひたすら小見山くんに対しての罵詈雑言が飛び出してくるのだ。
「嫌だ……俺はお前が何と言おうと―――離さない。俺は、お前のことが好きだ―――たとえ正気を失ってるとしても……俺はあの雨の日に×××の家に迷い込んでしまった時―――いいや、違うな……俺はずっと前からお前の事が好きなんだよ……日向……っ……」
ぎゅうっ……と僕の体を強く抱きしめたまま、小見山くんがどことなく切なげな―――それでいて真面目な表情を浮かべつつ耳元で囁きかけてきた。
「……っ…………!?」
その小見山くんの様子を見て、申し訳ないという気持ちと怒りという感情が入り交り、咄嗟にどう反応していいか分からなくなったせいで頭の中が霧がかったかのように真っ白になってしまう。そして、何秒間か―――必然的に小見山くんと抱きあっているかのような体制になっていた時、突如として新たな異変が僕を襲ってくる。
「い……っ……痛いっ……痛い、痛いよ……」
頭を咄嗟に抑えざるを得ない程の―――凄まじい痛みと、以前に感じた事がある右目の中を何か生き物が暴れ回っているかのような奇妙な感覚___。
そして、その2つの奇妙で不快な感覚に襲われると同時に脳の中にじわり、じわりと染み渡ってくるような凄まじい快感―――。自慰に耽っている時よりも何倍も気持ちよく脳天に突き刺さるかのようにエクスタシーを感じるのだ。だからこそ、体がビクン、ビクンと魚のように跳び跳ねていて海水パンツの中に抑まって勃起しているぺニスがドクドクと脈打っているに違いない。
「お、おい……っ……本当に―――大丈夫なのかよ……やっぱり、お前―――なんか……へ……ん」
「う、うるさい……っ……うるさい、うるさい、うるさい……僕は変なんかじゃないってば……もう僕に構わないで……っ……!!」
(これは―――本当の僕じゃない)
(僕は―――小見山くんが言うようにおかしい)
頭の片隅では―――うっすらと分かっているはずなのに。
ドンッ……!!
頭の中全体をかき乱されるかのような強烈な痛みがきっかけとなる。そして、その結果――― 怒りの値がピークに達してしまった僕は小見山くんが悪くない、と心の片隅で思いながらも―――まるで、それが当然だといわんばかりに勢いよく彼を蓋など閉められていない剥き出しとなったままの古井戸の方へと渾身の力で突き飛ばしてしまうのだった。
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