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第195話
「……っ……や、やだ……やだ、やだ……あ、足が……勝手に……っ……」
ずず、ずず……っ……
ずり、ずり……
ナニカに、とてつもない力で足を押されている___。
まるで、早く壇上を登れといわんばかりに一歩、一歩確実にナニカが僕の足を操っているのだ。僕が一歩、一歩と壇上に近づいて行く度に両脇にいる真っ黒い影のような見た目のクラスメイトや在校生達は狂ったように拍手をし、そして【お目出とう、お目出とう】と壊れたテープレコーダーのように同じ言葉を繰り返す。
(あの壇上に登って―――偽物の校長先生から表彰状を受け取ったら……今度こそ僕はこの呪場に飲み込まれてしまう……っ……そしたら永遠に父さんやカサネ達を救えない……ど、どうにかしてそれだけは……阻止しなきゃ……っ……)
と、頭では分かっていても―――ナニカから操られている僕の足は言うことを聞いてくれない。今までずっと共に歩いてきた―――僕自身の体の一部の足だというのに。まるで、足だけが別人のものになってしまったかのように意思に反して動いてしまう。
―――チャーピー人形だ。
ピンク色や水色、それに黄色といった色とりどりのドレスを身に付け、古ぼけてボロボロになった三体のチャーピー人形が僕の足を操っている。かつて、僕が拾ったチョコレート缶に入れられていたボロ、ボロのチャーピー人形と同じ見た目をしているソレらはクスクスと愉快げに笑いながら―――僕を何とかして壇上まで昇らせようとしている。
しかも、それだけじゃない―――。
三体のチャーピー人形だけじゃなく、うね、うねと蠢いているナメクジの大群までもが僕を無理やり壇上の方へと導いているのだ。
トン、トン……トン……
とうとう、表彰状らしき赤紙を差出してくる偽物の校長先生と対面してしまった。
【偉大なル少年―――日向くん、汝……この舐苦童子の呪場ノ界民となる事ヲ誓イ、永遠に舐苦童子ノもノとなル事ヲ誓いますか?】
「なっ……何を……※※※※___は、はい……誓イまス……」
僕が壇上にいる偽物の校長先生の言葉を否定した途端に、一匹のナメクジが口を抑え―――しばらくすると思ってもいない反対の言葉を無理やり言わされてしまう。そして、その直後―――背後に纏わりつくチャーピー人形達や体を這い回る気持ち悪いナメクジ達によって、とうとう足や口だけでなく両手さえも操られて表彰状を受け取るために無理やり伸ばされてしまいそうになった時―――、
ガシャァァァーン……ッ……
天窓のガラスが勢いよく割れる音が響き、招かれざる乱入者達が降ってくるのだった。
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