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第199話
しかし、それらの三冊の本を拾い上げた所で__いきなり大きな壁に阻まれる。
(待てよ……これを拾い上げた所でどうやったら彼らを救う事が出来るんだろう……)
急いで、ページをペラ、ペラと捲る僕の心に焦りが走る。いくらページを捲っても、捲っても__僕の目に飛び込んでくるのは大きな口を開けて言葉は出せないけれども何かをを必死で訴えかけてくるような恐怖と不安でいっぱいになっているのが目に見えて明らかな『父さん』、『カサネ』、『小見山くん』の顔___。
恐らくは、それぞれ本の題名に合わせて、カメラで撮った写真をそのまま張り付けたような《実写風》の顔と、漫画家(もしくは画家)が描いたような《絵画調》な顔とでバラバラだったけども___とにかく、僕が大好きな彼らが助けを求めているのに間違いはない訳で無我夢中で救いを求める彼らをこの世界に戻す方法を考える。
黒い豆粒のようにぎっしりと紙面に敷き詰められた文字の中で、僕の大好きな人達の救いを求める必死の形相の図が妙に目立っていて__それだけでも途徹もなく不安を感じてしまうのに早く、早くと気がせいてしまい余計に頭の中がこんがらがってしまう。
「夢月___彼らを救う方法を教えて?夢月は――知ってるんでしょう?」
「駄目だよ、それは駄目だよ……日向くん。彼らを救いたいならキミがきちんと考えないと。キミが大好きな人たちが可哀想だよ……彼らはボクじゃなくてキミに救いを求めてる。でも、ボクが大好きなキミにひとつヒントをあげるよ……日向くんのパパの題名が書かれた本を拾って中を見てごらん?日向くんったら駄目じゃないか……キミに一番救いを求めてるパパの題名が書かれた本を最初に見ないなんて……ほら、見てごらんよ」
そう言われて、僕は慌てて父さんの題名が書かれた本を拾い上げてから内容に目を通す。題名とは裏腹に、英字体の文字がびっしりと紙面を覆い尽くしていて《救いを求め続ける父さんの図》以外は終わりのページまで、ずっとその状態が綴られている。でも、この頭がおかしくなりそうなくらいに難解な英字体が綴られている本の中にヒントがあるのは間違いない。
____僕は夢月を信じてる。
しょぼ、しょぼする目を凝らして中をジーッと見つめていると___ふと、ある違和感に気付いた。ほとんどが、同じサイズの黒文字の中で二つの単語だけがゆら、ゆらと揺らめく蜃気楼のように形が崩れていて僅かに浮かびあがっている。
僕に早く気付いてくれ、といわんばかりに__ゆら、ゆらと揺らめきながら紙面から浮かびあがっているのだった。
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