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第200話
《蛙》と《姫様》___。
その文字だけが、他の文字たちとは違って、呆然と紙面を見つめる僕へと訴えかけてくるのだ。
(蛙___蛙と姫……って……何だろう……どうして、今ここでそんな言葉が……)
どうしていのかさえ分からずに、途方に暮れたままボーッと《蛙》と《姫様》という文字を見つめ続けるしかなかった僕の頭にふっと__ある幼い頃の《思い出》がよぎる。
それは皮肉にも――今は亡き母との欠けがえのない《思い出》であり、どんなに願った所で今は決して叶えようがない母さんと父さん……それに今は訳あって別居している弟の光太郎と過ごした日々の記憶だった。
夜、寝付く前の___朧気とした記憶。
『蛙はね__どんなにお姫様が嫌がっても諦めずにお願いしたのよ。蛙はお姫様とお友達になりたがってたの。そして、最後のお願いとしてキスするようにお姫様に願ったの……』
『え~……蛙とキスなんて嫌だよう……ママ、その後――お姫様はどうしたの?』
『あのね……お姫様は蛙と___』
___キスをした。
そして結果的に蛙はお姫様と友達になるどころか結婚をし、人間に戻り――幸せになった。いずれにせよ、蛙はお姫様のキスで呪いが解けて元の姿を取り戻したのだ。
いちかばちか、やってみるしか方法はないと思った僕は父さん達が閉じ込められている三冊の本を拾い上げると――表紙や裏表紙、ましてや紙面ではなく父さん達そのものを現しているかのような題名が印刷されている【背表紙】へと言葉では言い表せれない程の深い愛を込めた口付けをするのだった。
もちろん、三冊ともにだ___。
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