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第219話

※ ※ ※ その後、結局二度寝は出来ずに漫画を読んだり、叔父さんの部屋を訪ねようかと悩んでいる内にダラダラと過ごしたせいで普段起きる時間になって皆で朝ごはんを食べたのだけれど__いつもなら饒舌とはいえなくとも何かしら僕に話しかけてきてくれる父さんはずっと井森くんと楽しそうに話していて僕が会話に入り込む隙間なんてなかった。 一度、父さんと目が合ったのだけれど__『お前の事に関心なんてない』といわんばかりにフイッと顔を逸らされてしまった。その途端、頭の中にノイズが走り続けてモニターの中にいる歪んだ《ヨーコちゃん》の優しい笑顔が思い浮かぶ。 (ヨーコちゃんに__会いたい……っ……) 「どうしたの……日向くん?君のお父さんが構ってくれないからって……ヤキモチ妬いちゃったんだ……かーわいい!!」 「ごちそうさま……っ……」 ニヤニヤと笑う井森くんのその言葉を聞いて、途徹もない怒りに支配されてしまった僕は勢いよく椅子から立ち上がると、そのまま少しだけ乱暴に食器を洗い場に置いてから、そそくさとその場を離れようと振り返った。その時、背後に悲しそうな表情を浮かべている矢守くんがいてびっくりしてしまう。 「あの、あのさ……その__イモくんが……君にあんな事を言って、ごめんね。ここは――君の……っ……」 「____別に、矢守くんが謝る事はないよ。僕、先に学校に行ってるね」 早くこの場から去りたかった僕は、わざわざ謝りに来てくれた矢守に対して失礼な事だと分かってはいたけれど、彼の言葉を遮って逃げるようにして居間の流し場から足早に出て行くのだった。 ※ ※ ※ キーン、コーン…… カーン、コーン…… (今日の授業は終わった……これで__ようやくヨーコちゃんに会いにいける……っ……早く、早く___) ガタ……ッと音をたてつつ勢いよく椅子から立ち上がると、そのまま他のクラスメイト達が続々と帰っていく教室の扉へと向かって行く。 「おい、お前____何処にいくんだよ?これから、自然交流会の打ち合わせをするって言ってあっただろうが!!今回は都会から大学生のグループが来るとかで__面倒なんだよ。俺ら小学生も何か催し物をして大学生を歓迎してやる、とか何とか……あ~あ、面倒くせえ!!とにかく、これから話し合いをするから……こっち来いよ!!」 「こ、小見山くん……っ……そ、そうか……自然交流会の……って、今回は大学生のグループが来るって__ど、どういう事!?」 「何だよ……聞いてねえのかよ。土橋の知り合いが__勉強のために自然交流会に参加させてくれって頼み込んだらしいぜ……ったく、気にくわねえ……余計な手間をかけさせやがって__」 などと、ブツブツと文句を言いつつ小見山くんは自然交流会の打ち合わせを行う《空き教室》へと僕を半ば強引に連れて行くのだった。

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