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第226話

◆ ◆ ◆ 「……っ____!?」 ぱちっ、と目を覚ますと__真っ先に飛び込んできたのは両手を握りしめながら心配そうに此方を覗いてくる僕の大好きな人の姿だった。 「日向_____お前……大丈夫か?ヤドリギの日和に言われて、でっけえ妙な電光掲示板がある畑に駆けつけてみれば、お前とこの見知らぬガキが倒れてたんだ……しかも、あんなにどしゃ降りの雨の中で必死になって助けてやった俺の身にもなれよ。というか、お前ら――あんな場所でいったい何してたんだよ?」 「カ、カサネ……ありがと……う…………」 と、呆れた様子で言い放ってきたカサネ(日和叔父さんじゃなかった)が問い掛けてきた時、ふと僕の脳裏に疑問が浮かんだ。今、僕の真横で眠っている翔くんの恋人であるクリスさんの【遺体】は何処に行ってしまったのだろうか。 先程のカサネの口振りでは、僕と翔くんがどしゃ降りの雨の中、倒れていた____としか告げられていなかった。 (じ、じゃあ……クリスさんの遺体は――他の誰かの手によって……) 得たいの知れない不安を心の中に抱きながらも、ちらりと真横にいる翔くんの様子を見てみた。すると、ちょうど翔くんが目を覚ましたため僕は後頭部にズキズキとした痛みを感じつつも彼の方へと体を動かす。 「か、翔くん……大丈夫!?」 「ん……っ……ひ、日向にい__大丈夫。でも、この人……誰だったっけ?」 体の不調を訴える訳でもなくカサネの事を怪訝がる翔くんの様子を見て、とりあえずは安心した僕だったけれど__それと同時に違和感を覚えてしまう。 大事な人を失ってしまった割には今の翔くんの態度は何だかおかしい気がする____。 「ねえ、カサネ……あの畑で倒れてたのって……本当に僕と翔くんだけだった?」 「はあ?素直なオレが嘘なんか言う訳ねえだろうが……ったく、お前――本当にヤドリギの日和の事しか頭にねえんだな……まあ、オレは出て行くから二人でつもる話でもしてろ……日向、後でヤドリギの日和にも会いに行ってやれよ」 翔くんになるべく聞こえないように小声で尋ねると、どことなく切なげにフッと微笑んてから、カサネは部屋から出て行ってしまった。僕らを心配してくれたカサネに悪い事をしてしまったな、と心の中で反省しつつも、僕は翔くんへ向き直ると躊躇いつつも意を決して口を開く。 「ねえ、翔くん……クリスさんが__何処に行ってしまったのか――知らない?」 さすがに、クリスさんが遺体となって発見されたとまでは面と向かって言えなかったものの声を震わせながら遠慮がちに尋ねる。 すると____、 「クリスって、誰…………?」 クリスさんと仲がよく喧嘩別れしたとはいえ恋人同士だった筈の翔くんは呆気なく、そう言い放ったのだった。 それから、暫しの間____日和叔父さんが翔くんを家まで送ると言いに部屋へ来る迄、僕の翔くんの間に沈黙が流れたのだった。

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