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第234話

チカチカと光を放ち、まるで僕らに見つけてほしいといわんばかりにダイこと大井の黒地蔵から少し離れた場所に落ちているのは、生前の彼が肝試し中に持っていたスマホだった。 「これは……黒地蔵の所持していたものか__ん、あなったー@みーな??何だ、それは……ああ、最近流行りのSNSとかいうやつか。なるほど、どうやら……動画も見れるサイトのようだな……どれ、どれ……」 最近のSNS事情に疎い小見山くんのお父さんが、訝しげな表情を浮かべつつ首をかしげながら黒い手袋をはめたまま落ちているスマホを拾ったかと思うと、傍らにいる息子から助言を受けながらそれを操作し始める。 とはいえ、既に《あなったー@みーな》の動画カテゴリーのページに繋がっているとするならば、中央の【⇒】のボタンをタップすると動画を見れる筈なのだけれど____。 『カア、カア____カア……ッ……』 その異様で不気味としか言い様のない声が聞こえて辺りに響いた途端、ビクッと体を震わせてしまった。それは、うんと大人である小見山くんのお父さんや僕よりもだいぶ大人な土橋さん、るりさんに至っても例外じゃない。 スマホの画面の中で、烏のような鳴き声を放っていたのは生前のダイ、しかもおそらくは何者かによって手にかけられる直前の【生きていた彼の最後の声】なのではないか__と小見山くんのお父さんは遠慮がちに僕らに教えてくれた。 でも、僕は――ふっとあることが気になって__おそるおそる落ちているスマホの方へと目線を向ける。確かに、生前のダイが何故スマホの動画に【烏のような鳴き声を吹き込んだ動画】を残したのか分からないけれども、それとは別にもうひとつ疑問があるからだ。 (これ――全然、電池が減ってない……ダイさんが命を落としてから、だいぶ時間がたってるのに、命を落としてから今までずっとこのスマホはこのままだってことだよね――そんなこと……普通だったらあり得ないよ……これって__もしかして何かしらの怪異なるモノの仕業なんじゃ……っ……) 電池は満タンのまま、全く減っていない。 普通は、一晩以上ずっとそこに落ちていたら__いくら何でも電池は減る筈なのに、それが減ってないということはかなり【異様】なことで【怪異なるモノ】の存在に慣れてしまっている僕は自然とそれの仕業なのではないかと疑ってしまう。 小見山くんのお父さんも、そのことについては気づいていて不思議そうにスマホを凝視していたけれど、まさか日和叔父さんや父さんと違って《怪異なるモノ》の存在を認知していない彼に対して「霊的で厄介な怪異なるモノがこの謎の現象を引き起こして僕らを困惑させようとしてる」などと説明したところで、かつての市正家の人々のように軽蔑されるだけかもしれないと思ってしまうと何も言えなかった。 だからこそ、僕は__ダイだった黒地蔵が小見山くんのお父さんの部下の人達によってブルーシートを囲まれて何処かへと運ばれていくのと辺り一面に規制の黄色いシールを敷かれていくのをボンヤリと見つめて放心状態になるしか出来なかったのだ。 「じゃあ____次の場所で、また確認してもらいたいことがあるけど……一緒に来て貰えるかな?」 「は、はい…………」 小見山くんのお父さんの声で、はっと我にかえった僕は泣きそうになるのをぐっと堪えつつも小さく頷くのだった。 また、粘りつくような視線を周囲から感じながら____。

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