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第248話
「そんな風にボクを睨み付けて、ましてや日向にいとか他の奴らを巻き込んで、そいつらの夢を食べて取り込んでこの呪場に引きずり込んで架空の世界を作り上げても――何も変わりはしないよ。キミ自身が変わらなければ、ずっと地味で弱い女の子のまま……クラスメイトから存在さえろくに覚えてもらえない女の子のままだ」
【あなたみたいなのは、初めてだわ。みんな、叶わざる希望をどうにかするために救いを求めて、ここにくるのに……。あなたの言うことも一理あると思うの。でもね、そうする訳にはいかないのヨ。こっちには、こっちの都合があるノ。アノ人には、アノ人なりの事情と叶えたい夢があるノ。ワタシは、それを叶えるためにここでアノ子たちの夢――希望を食べて蓄積させ、尚且つそのエネルギーをアノ人に譲るべくここにいるしかないのヨ!!】
怒りと悲しみの混じった【ユメミ】の声が辺りにキーンと響き渡った直後のことだ。
【ユメミ】と【水色ウサギのぬいぐるみ】が立っている場所の、すぐ真後ろに存在していて虹色の水が涌き出てている噴水に、とある異変が起こったのだ。
噴水から永久的にこんこんと涌き出てくる水は、先程までのカラフルで人々の目を引く綺麗な虹色とは真逆の焦げ茶色へと変化していき、更には余りの臭気に光太郎は思わず眉をひそめて嫌悪感をあらわにしながら鼻を摘まんだ。
咄嗟に、そうやらざるを得なかったのだ。
パッと見た感じは、チョコレートに似ているといえば似ているのだけれども、何せ匂いが酷い。
「見た目はチョコレートに似てるのに、亞乃川の匂いがする………気持ち悪い____」
亞乃川とは、かつて光太郎が村を出て行く前――つまり、兄である日向と良好的な関係だった時によく二人で遊びに行っていた川のことだ。
とはいえ、その当時に亞乃川を気にいって足しげく通っていたのはどちらかといえば兄の日向の方だったのだけれども、あの頃はまるで子犬のように彼の後を追い掛けていたのを思い出して無意識のうちに口を尖らせてしまった。
それは、単に泉から涌き出てくる水の匂いが鼻がもげそうになるくらいに強烈な悪臭を放っているからではない。
「自分の空想に浸るばかりの……臆病なキミが、日向にいとボクの思い出に侵入してくるんて――悲劇のヒロインぶるのも、いい加減にすれば?」
【だっ……て――だって、あの御方が言っていたのヨ!?こうすれば、全てうまくいくって……大好きな王子様も、ワタシだけを見てくれるって――ううん、クラスのみんなもワタシに気付いてくれるっテ……嘘偽りのない生身のワタシを受け入れてくれるっテ……】
その【ユメミ】の言葉を聞いて、光太郎はニヤリと笑った。
それは、つい【ユメミ】がポロッとこぼした失言に気がついたからだ。
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