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第4話 微妙な関係
目覚めると、そこは自分の部屋だった。
目の前には天井。
体が……だるい。
熱い。
数時間前___
第4音楽室。
「…はぁ…はぁ、はぁ…」
りっちゃんの手で、イカされてしまった。
恥ずかしすぎて、死にたい!
「たくさん出たね。床が汚れたよ?」
「なっ!だって、それは、りっちゃんが……!」
流された僕も、悪いけど。
「うん。裕太が可愛いから、つい」
「………」
そんなこんなで、りっちゃんにイカされてしまったものの、最後まではシなかった。
まあ、さすがに学校だしね。
「裕太」
「…ん、何?」
「裕太、学校では眼鏡外したら駄目だよ」
「? ……なんで?」
「いいから、わかった?」
「う、ん?」
そうしてくっついているうちに、新入生歓迎会は終わり、僕は家に帰ったのだが……。
…
……
「37.9…。また上がった……」
「…あらあら、可哀想に……。日頃の疲れが出たのかもしれないわねぇ」
帰宅途中、頭痛に襲われ、帰宅後は熱を出し倒れてしまった。
そういえば、ここ最近は頭悩ますこと多くて、あんまり寝てないし、食べてなかったな……。
そのせいかも。
自分の体調管理もできないなんて、情けないなぁ。
「辛いでしょう、裕ちゃん。今日はもう、ゆっくりお休み……」
「うん……ありがと、母さん…」
ああ、頭痛い。
熱なんて……久しぶりだな。
中学生以来じゃないか…?
今日はほんとにいろいろありすぎて、頭のなか整理したいのに、頭が……回らな、い。
ぼーっとしてきた……。
これ、明日学校、行ける、か……な…。
そして翌日___
「下がった…」
見事に全快。
あんなに辛かったのに、今は全然なんともないや。
一体なんだったんだ。一時的な疲労?
僕の考える時間を返してくれぇぇ。
昨日あんなことがあって、もうどんな顔すればいいのか……ってあれ?
なんかなんか、よく考えてさ、よく思い出してみたらさ。
りっちゃん、僕のこと、結局どう思ってるんだ?
昨日の会話。一部。
「それは、裕太が可愛くて仕方ないから。だから、裕太にちょっかい出すのは許さない、って言ったんだよ」
……好きって、言ってない、ね?
可愛い、とは言われてるけども。
え?
なに、りっちゃん、結局僕のこと好きなの?なんなの?
混乱してきた。また、熱出そう……。
「裕ちゃ~~ん?そろそろ学校の時間よぉ~」
「…はぁーい!すぐ行く!」
また、ふりだしか……。
キーンコーンカーンコーン__
屋上にて。1人昼飯。
今日はサンドイッチだぁ♪
「うーん、もうお昼なのに、りっちゃんと1度も会えてない……」
やっぱり、放課後は図書室、かなぁ。
1日1度くらいは顔見ておきたいし。
好き、だからね。
放課後、図書室。
「……」
あれ、いない……。
今日は生徒会、ないはずなんだけど…。
図書室をぐるっと一周してみたが、やはりりっちゃんはいなかった。
「…もしかしたら、来るかもしれないし。少し待ってようかな……」
下校時間まで、まだ時間あるし。
1時間後__
「……来ない」
なんでーーー。
そろそろ暗くなってきたなぁ……早く帰らないとヤバイかな…。
母さん、めちゃくちゃ心配してるだろうなぁ。普段ならもう、とっくに家にいる時間だから。
「仕方ない、帰ろう……」
帰ろうとすると、
ガラッ__
図書室の扉が開いた。
人!
「……りっちゃん?」
扉の方へ、急いで歩く。
「ざーんねん!りっちゃんじゃないよ~」
「!」
なんだ……。
「梶、先輩…?」
見知った顔。優しい先輩。
どうしてここに。
「やっほ!羽柴くん。こんな時間まで何してるの?危ないよ~」
あ……心配、してくれてるのかな。
「……りっちゃん、いるかなって。いないから、待ってたんですけど…来なくて…」
もう、帰るとこだけど。
「律?律ならもう、とっくに帰ったと思うよ~?」
え。
「そ、なんですか……」
なんだろ、このかんじ……。
もやもやって、胸のとこ。
「……」
「まあまあ!そんな落ち込まない!どんまい!」
「え、あ……ふふっ」
あ、思わず笑ってしまった。
「ん?俺なんか、面白いこと言った?」
「いえ……ははっ」
ほんとにこの人は、いい人だなぁ。
明るい性格が羨ましい。
僕とは正反対。
「…良かった」
「……え?」
明るくて。
「元気、なかったから」
とても、優しい。
「…あ、ありがとうございます…」
先輩の手が、ポンと、僕の頭に乗せられた。
「まあ、俺はもう帰るけど!羽柴くんも気を付けてね~。最近物騒だから」
「はい。ありがとうございます」
先輩が出ていって、僕もそろそろと、帰りの支度をしていると。
「裕太」
まだ聞き慣れない、低い声。僕の大好きな声が聞こえた。
「りっちゃん……!?」
まだ、残ってたんだ……。
そうだ。聞かなきゃ。
「あ、りっちゃん。僕聞きたいことがあって……」
「…何」
あれ?
「うん。昨日のことなんだけど……」
なんかりっちゃん。
「結局僕のこと、どう思ってるのかな、って」
怒ってる……?
「……」
さっき名前を呼ばれたときは、そうでもなかったけど。
今はなんか、ちょっと……
怖い。
「……ああ、昨日のね」
「……」
「気まぐれ」
「……へ?」
え?
「…裕太のこと、可愛いと思ってるよ。けど、そういう対照ではないから」
目の前が真っ暗になった気がした。
「本気にならないでね」
りっちゃんの、みたことのない目の冷たさに、血の気が引いてく。
「……う、ん」
そう答えるのが限界だった。
しばらくの沈黙のあと
「じゃあ、俺はもう帰るから。裕太も早く帰りな」
そう言われて、静かに頷いた。
声が出なかった。
口を開くと、泣いてしまいそうで。
ガラ_
バタン___
りっちゃんが出ていって、涙がこぼれた。
「分かってた、くせに……」
期待なんかして、バカみたいだ。
男同士で、恋愛なんかできるわけない。
りっちゃんのまわりにいる、可愛い女の子達には敵わない。
全部、分かってた。
「…失恋、しちゃったな」
悲しいな……
図書室扉前__
「あ~あ。泣かせちゃったよ。律は駄目だなぁ。大切なものに気付かず、自分から手放すなんて…」
「誰かに取られても知らないんだから~。例えば、俺、とかね♪」
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