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「ふぅ…お腹一杯。」
ご馳走さまでした…そう言って手を合わせる千田にチラッと視線を寄越す。
自分の前には空になった丼。
差し出された親子丼に最初は警戒していたが、目の前でパクパクと美味しそうに食べられてしまい、体の方が先に素直に空腹を訴えた。
グゥゥ…と鳴った腹の音にチッと舌打ちすれば、千田がクスクス笑いながら口を開いた。
『薬入れてなんかないから安心して食べて。冷めたら美味しさ半減するよ。』
『うっせぇ…』
ここで意地を張っても仕方ないかと、三園はしぶしぶ箸を取り親子丼を口にした。
『………うま』
思わず正直に呟いてしまった言葉。
絶妙な出汁加減、柔らかい鶏肉、とろとろの卵…千田の作った親子丼は、想像以上に旨かった。
『そう、良かった。』
『…っ、』
名前を呼んだ時のように嬉しそうに頬笑む千田に、また視線を奪われる。
何となく居心地が悪くて、三園はその後は無言で親子丼を食べ続けた。
「お茶淹れよっか。」
まるで友人を食事に誘ったかのように何の警戒もなく立ち上がる千田に、三園は「ん…」と返事をした。
めっちゃ油断してるよな、これ。
そう思うのと行動に移すのは同時で、背中を向けた千田の肩を掴むと一気に引いた。
「!!」
バランスを崩した足を払う。
ダンッ!!!
広くはない室内に大きな音が響き、ヂャラ…と硬質な音が互いの手から奏でられた。
「……鍵、出せよ」
「…………」
押し倒した千田の腹に馬乗りになり両手を顔の横に縫い付ける。
力一杯押さえ付けゆっくりと告げれば、千田は真っ直ぐに見上げてきたー。
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