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「いい加減にしろよ、千田!どけっ!!」
形勢逆転。
押さえつけていた側から押さえつけられる側となり、三園は声を荒げた。
体を捩って抜け出そうと暴れるが、ガッチリと決まっているらしい体勢は容易には崩せない。
グッと捕まれた手首の鎖がヂャラと音をたて、腹の上に感じる千田の重みに危機感を煽られた。
「鍵」
千田の静かな声に、三園の暴れていた体がピタリと止まる。
それでも睨んでくる瞳の鋭さは変わってはいない。
「5日後に届くよ。ここに」
「な、に…」
楽しそうな声。
自分が喚くのがそんなに楽しいのかと怒りが増す一方で、冷静さを取り戻そうとする頭が千田の言葉の意味を急速に理解していく。
つまりこの男は
俺を眠らせ拉致ったあと自宅に運び
鎖で自分と繋ぎ
その鍵をわざわざ5日後に届くように、日にち指定までして郵送した
ということ、か?
「そういうことだよ。」
思考を読んだように千田が口を開く。
その顔がゆっくりと近付いてくるのを三園は眺めていた。
頭が理解した途端に、今度はその理由が分からなすぎて思考が止まっていた。
チュッ…
小さなリップ音と額に触れた柔らかい感触。
次いで、千田の匂いが強まり体がぎゅっと抱き締められた。
「だからさ、諦めて5日間は僕と過ごして。お願い。」
「……なんで、そんなこと…」
一緒に過ごしたいのなら言葉で言えば良い。
誘われれば別に断ったりなどしない。
「三園のことが、本気で好きだからだよ。」
抱き締めたまま告げられた言葉は、どこか震えているように感じた。
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