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「……勿体ねぇ」
破られ床に落とされたシャツを持ち上げる。
浴室からはシャワーの音が流れ、キッチリと閉じられない扉からは湯気とシャンプーの匂いが昇っていた。
鎖に絡まるのが鬱陶しいからと、なんの躊躇いもなく破かれたシャツをゴミ箱に投げ入れ、これからのことを考える。
長い鎖や薬、鍵の行方。
計画的に三園を拉致り監禁して、告白して。
『一緒に過ごしたいだけ』
なら、5日間大人しくここで過ごしてりゃ良いのか?
鍵が届けばそれで解放される。
5日くらい我慢できる。
けど、キスされた。
抱き締められた。
『好きだ』とハッキリと言われた。
嘘だとか嫌がらせだとか…そんな考えは消えたが、やっぱりいくら考えても好意を寄せられる覚えがない。
「女に不自由しそうにないのにな…」
見下ろした千田の顔を思いだす。
気にしたことが無かったが、あの整った顔立ちは女受けするに違いない。
それにあの笑顔。
どちらかと言うと無愛想で何を考えているのか分からないくせに、笑うとフワリと表情が緩む。
あのギャップには正直驚かされた。
「…ま、なるようになるか。」
フローリングにごろんと寝転び天井に言葉をぶつける。
色々考えても仕方ない。
元々、物事を深く考えるのは苦手だ。
女じゃなし、力づくでどうこうできるものでもないし何とかなるだろ。
そう結論付けて瞳を閉じる。
ひんやりとした床が肌に心地良い。
大きく息を吐き出せばゆっくりと意識が沈んでいったー。
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