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「…園、三園、起きて。」
「…ん…あ゛……?」
体を揺らし無理矢理覚醒させられる不快感に、三園はうっすらと瞳を開けた。
「おはよう、もう9時だよ。朝食できたから起きて。」
「……!」
腕を顔の横に着いて真上から見下ろしてくる千田の姿に一気に目が覚める。
「んだよ、ちっけぇ…!」
「った!」
ドカッと真上の胸を力任せに押し上げ腹筋を活かして起き上がると、まだボヤけた頭がクラクラとする。
「ん゛~…」
あったま痛ぇ。
そうだ、ここは千田のアパートで…コイツが風呂入ってる間に眠っちまって……
ワシワシと頭を掻けば手首の鎖が顔に当たる。
「チッ、邪魔くっせえなコレ。」
ジャラ…と音を響かせながら腕を持ち上げた。
起こされるわ、拘束された鎖はあるわ、頭は痛いわ…気分が悪い。
カタン…
視界の端に映るテーブルの上に牛乳とトーストが並べられる。
続いてカップスープ。
そしてキュウリと目玉焼きの乗った皿。
「…いらねぇ」
自分が朝メシ食いたいからって起こすなよ、ムカつく。
気分悪いまま言えば「そう?」と気にした風もなく千田はトーストを囓った。
なんだよ、コイツ。
このマイペースやろうが。
こっちはお前のせいで気分悪いんだよ。
朝の低血圧も手伝って三園のイライラは増すばかりだった。
「朝、食った方が一日スッキリするのに。」
「……」
「牛乳だけでも飲んどく?」
悠長に差し出されるコップ。
それをギロッと睨み付け立ち上がる。
「ざっけんな、一人で食ってろ。」
そのままバサッとシャツを脱ぎ、苛立った気持ちのまま千田の横を通り抜ける。
鎖に引っ掛かったシャツが床を滑るのを厭わず進むと、三園は浴室の扉を開けた。
「……見てんじゃねぇ、変態」
裸の背中に刺さる視線。
それに吐き捨てるように告げると、浴室の中へと足を踏み入れた。
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