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…慌てた顔も良かったな。 ソファに座り背凭れに体を預ける。 タオルと下着を持って行くだけで終わるつもりだったのに、シャワーの音とそこから感じる三園の気配に欲が出た。 自分はこんなにも我慢が効かないタイプだっただろうかと、千田はひっそりと笑った。 千田の姿を確認して固まった三園。 濡れた素肌、オールバックにされた前髪、顎から滴る水滴にさえ目を奪われた。 慌てて隠れるかと思いきや、堂々と頭を拭き始めたその様子にどうしても触れたくなった。 どさくさに紛れて首筋をなぞればビクッと震えた身体。 僅かに赤らんだ目尻があまりにも色っぽく見えて、抱き締めてキスしたいと思った。 うん、よく我慢したよね。 自分で自分を褒めてやりたい。 ガチャ、ガタン… 大きく息を吐き出していれば聞こえてくる浴室の扉の開く音。 視線だけをそちらに向ければ、上半身は裸のままの三園の姿。 口に歯ブラシを咥え、不機嫌そうにこちらを見ている。 「ふぎ、ひゃいってきたら、ぶっころふゅ」 ワシャワシャと磨きながら告げられた言葉に思わず吹き出してしまう。 『次、入ってきたらぶっ殺す』 かな? たぶん至って真剣なんだろうけど、歯ブラシ咥えて言われてもね。 「…殺されたくはないけど、約束はできないかな。」 ニッコリと微笑みながら返せば射殺されそうな視線を向けられる。 チャリ、ヂャラン…!! 三園の左手首が翻され、波打った鎖が音をたてて千田の足を打った。 「いった…!酷いなぁ。朝から暴力ばっかりダメだよ。」 「じごーじろくらろ」 足を擦る千田にフンッと鼻を鳴らし、三園は浴室へと戻る。 自業自得、ね。 毛並みを逆立てて威嚇してくる猫のような三園。 さて、どうやって手懐けるか… いっそ最後まで威嚇されたままでも面白いかもしれない。 それはそれで君は僕を刻むだろう…? ソファに凭れたまま、千田は愉しそうに笑ったー。

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