20 / 62
4-4
「テレビに出んの珍しいよな。生演奏で聴けるとか、マジやべえって。」
「……へぇ」
「…まさか、知らないってことねぇよな?」
「知ってるよ、名前だけなら」
「まじか…勿体ねぇ、聴いて損はねぇからちゃんと聴いてみろって!」
ニカッと笑いながらそう言う三園に、千田は苦笑した。
もともと騒がしいのは苦手で、歌番組も見ることがほとんどない。
もちろん好きなグループがあるわけではないから、CDだって買わないのだ。
ハッキリと言えば興味がないが、三園が嬉しそうに見ているからそれにつられて画面を見ている。
「やべぇ…鳥肌たつわ…」
前奏が流れただけでそう言う三園にそっと視線を移した。
確かに曲調も歌声もビジュアルも悪くはないが、ただそれだけだ。
千田の心を打つものはやはり無かった。
キラキラした目でみちゃってさ…ちょっと妬けるよね、これ。
「……三園」
そっと名前を呼んでみるが、流れる映像に夢中で返事はない。
裸の胸に光るシルバーネックレス。
ライオンがモチーフのそのネックレスは三園にとても似合っていて。
浮き出た鎖骨に沿ってネックレスが曲線を描いているのが色っぽく感じる。
「……三園、キスして良い?」
「ダメに決まってんだろ。」
曲に誤魔化されて適当に返事してくれるかと期待したが、ハッキリと断られてしまう。
視線すらこちらに向けないのがちょっと気に入らない。
「あー…やっぱ最高だわー…」
演奏が終わり宣伝になると満足そうに呟く。
その若干掠れたような声が、千田の欲に火を点けた。
「三園」
「ん?っ!!」
呼ばれて振り向けば、そこには千田の真顔が迫っていて。
キスされる…!
そう感じて咄嗟に口を掌で覆えば、思わぬ場所に熱が触れたー。
ともだちにシェアしよう!