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4-8
ガッ!!!
拳に伝わる衝撃と後ろに倒れる千田の体を認識し、三園は勢いのままその場に立ち上がった。
「死ね!クソがっ!!!!」
吐き捨てると同時に蹴りを入れようとして、その身体がピタリと止まった。
「三園、強いなぁ…」
「………………」
千田はクスクスと笑っていた。
愉しそうに、口の端から血を流したまま。
「……信じらんねぇ。お前、頭おかしいんじゃねぇの?」
「んー、今のでおかしくなったかも?」
「んだよ、それ。はっ…」
殴られた頭を撫でながら笑い続ける千田に、怒りを通り越して逆に笑いが込み上げてくる。
訳が分からない。
少しでも理解しようと試みた今日一日は、全くの徒労だったらしい。
ハァァ…と大きなため息を溢し頭をワシワシと掻いていれば、千田が動く気配がした。
「ね、三園」
「なんだよ、わっ!!」
ジャラッと鎖が音を響かせ、同時に手首が強く引っ張られた。
転びそうになった身体を支えようと咄嗟に片膝をつきテーブルを掴めば、クイッと顎を持ち上げられた。
チュッ…
「……………」
「好きだよ」
再び、今度は優しく触れた唇が甘い言葉を紡ぐ。
顎を持ち上げていた手がするりと頬を撫で離れた。
「だから、憎んでも良いから僕を君に刻んで欲しい…」
そう言う千田の顔は、さっきと同じ綺麗な微笑みをたたえていたー。
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