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窓の外は快晴。 千田に拐われたのが水曜だから今日は金曜か。 こんな天気の日に部屋の中で燻ってるとか、信じらんねぇ。 「なぁ、外の空気吸いに行かね?って、無理か…」 「無理だねぇ。」 笑いながら鎖を持ち上げる千田にため息をつき、三園はゴロンとその場にひっくり返った。 千田の言う通り朝の味噌汁が良いのか、体がゆっくりと目覚めていく。 目覚めてはいくが、することもない。 「………………」 瞳を閉じ外の音に耳を澄ます。 車のクラクション、通学中の子供の笑い声、遠くで鳴る電車の走行音。 平和な日常が広がる窓の外。 自分が今置かれている状況と何と違うことか。 フニッ… 不意におとずれた唇への柔らかい感触に、ゆっくりと瞳を開く。 「あれ?怒らないの?」 目の前にある千田の愉しそうな顔を睨み付け「別に」と返す。 「なんかもう慣れた。別に減るもんじゃなし、キスの一つや二つどうってことねぇ。犬に噛まれたようなもんだろ。」 「男前」 クスクス笑う千田を押し退け立ち上がる。 こうやって笑っているときが一番何を考えているのか分からない。 「…便所。覗くなよ。」 「それは追々の楽しみに取ってるから大丈夫。」 「んな、」 にっこりと微笑まれ言葉を失った。 変態の考えてることはマジでわかんねぇ…

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