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5-3
ピンポン…
その音に三園の体がピクッと動いた。
テレビの音ではない。
確かに室内で鳴ったその音。
ピンポン…
繰り返されるチャイムに思わず千田を見た。
この部屋に閉じ込められて初めて鳴ったチャイム。
「おい」
「…………」
ピンポン…
「おい、出ろよ。」
「…………」
動く気配のない千田に舌打ちし、三園は立ち上がった。
別に期待している訳じゃない。
誰かに助けてもらおうとか、もしかしたら知り合いかもとか、そんな風に思っている訳じゃないけれど。
外の世界に触れたい、と思った。
何でも良いから違う空気と触れ合いたい。
「……んだよ、離せよ。」
「出なくて良い」
ジャラ…と鎖が鳴る。
引っ張られそれ以上踏み出せないでいると、またチャイムが鳴った。
玄関を顎で示し千田を見下ろす。
「お前に用があるから鳴ってんだろうが。出ろよ。」
「必要ない」
「いい加減に」
『尚宏』
頑なに拒む千田に苛立ち大きな声を出そうとしたその時。
外から女性の声がした。
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