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『尚宏居るんでしょ?』 「………………」 「……はぁ…」 女性の声に固まっている三園を他所に、千田は小さく息を吐くとゆっくりと立ち上がった。 そうしてベッドを指差すと「座ってて」と短く伝える。 「……お願いだから、出てこないでね。」 なおも呼び掛けてくる声に額を押さえると、千田はため息を残して部屋を出た。 パタンと閉ざされる扉。 それでも鎖のせいで僅かに開いているそこから聞こえてくる声に、三園は耳を澄ませた。 「…、…………、…」 「……、…………」 ドアチェーンは掛けたまま会話しているのか女性の声は遠く、千田の声も途切れ途切れで上手く聞き取れない。 『帰って』『たかひろ』『今から』 それでも何とか聞き取れた単語に、首を傾げる。 もしかして、お袋さんか? 柔らかだった声はどこか憔悴しているようにも聞こえる。 千田は…特に変わりない、けれど抑揚のない声。 「……出てくるなって、出られるわけねぇだろ。」 上半身裸で、しかも鎖に繋がれて。 よく考えたら人に見られて嬉しい格好ではないことに、今更ながら気付かされる。 やがてドアが閉まる音と、ガチャンと鍵が掛けられる音。 また外の世界が遮断された事実に、何度目か分からないため息が溢れた。

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