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「お袋さん?」
「…そう」
「お前、尚宏 って名前なんだな。」
「ん」
「…………」
会話が続かない。
ボスッとベッドに倒れ込み三園は苦笑した。
『オトモダチ』じゃねぇもんな。
必要ないことを話す義理はないか。
昨日のやり取りを思いだし、ならこの関係は何なのだろうと疑問になる。
被害者と加害者?
確かに捕まえられてはいるが暴力は受けていない。
むしろ暴力行為で言えば自分の方が明らかに多い。
なら俺が加害者?
いやいや、違うだろ。
精神的ダメージは俺のが確実にでかいはずだ。
ぐるぐると頭の中を巡る疑問にうんうんと魘されていれば、背中にズシリと重みが掛かった。
「…重い」
「うん。」
「どけよ」
「うん。でも少しこのまま…」
三園の背中に頭を預け、千田はゆっくりと瞳を閉じた。
頬に感じる三園の体温。
呼吸によって上下する背中は堅くて、けれども温かくて。
「…ねぇ、三園」
「んだよ。」
抵抗するのに飽きたのか、触れても拒否されないことに笑いが溢れる。
「…君の中に、どのくらい僕が刻まれた?」
「はぁ?どういう意味だ?」
言葉と共に背中が捩れる。
それが少し物足りなくて、グッと力を込めて再びベッドへと押し戻した。
「動かないで、減るもんじゃないでしょ。」
呟けば、チッと小さな舌打ちが聞こえたー。
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