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5-7
「電気点けるね。」
小さな声が背後から聞こえ、次いで部屋がパッと明るくなる。
目に刺さる灯りに眉を寄せながらも、空になったペットボトルを握りつぶしゴミ箱に放った。
「ナイス」
壁に当たりそのままゴミ箱に落ちたのを見て千田が笑う。
その声にさっきまでの苦し気な様子はなく、三園は僅かに緊張していた体から力を抜いた。
「なんか目も覚めちゃったし、酒でも飲もっか。三園、何がいい?」
「…何があんだよ。」
「何でもあるよ。ビールでもワインでもウイスキーでも。あ、カクテルもあるけど割るのにジュースは切らしてる。どれがいい?」
ベッドから立ち上がりながら指折り告げるのに苦笑した。
カクテルジュースって、女子かよ。
「んなら、ポン酒」
「熱燗と冷や」
「冷や。コップ酒で出せよ。チマチマ飲むのたりぃ。」
「了解。三園らしいね。」
クスクス笑いながらキッチンへと向かう後ろ姿に、捨てていなかったキャップを投げつけた。
普通にダチの家に遊びに来ているかのような流れに、監禁されているのだということを忘れそうになる。
それでも、さっきみたいなのより全然いい。
何だったんだ、あれ。
魘されていたほんの少し前までの千田を思い出し、三園は小さく息を吐いた。
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